2013年10月29日火曜日

 先日、オランダの古き良き毒蛇キーパー達が「毒蛇のモルフを作って増やす事は(100歩ゆずって)許せるとして、ローカリティ等を気にせず乱交雑したり、ハイブリッドをたくさん作って売りに来る一部のブリーダーが増えていることだけはマジいただけない」「最近はインブリードの繰り返しで神経や内臓に問題のあるヘビを売るブリーダーが見られる、マジゆゆしい」とぼやいている場面を目にした。毒ヘビのミックスは日本でもハブで一時期問題視されていたように、交雑個体がどのような構成の毒を持つか分からない点が多いために、危険が伴う行為なのだ。また病気になったからと言ってすぐにホイホイと病院へ連れて行くことが難しいこのようないきものを買うに当たって「いかに健康・健全な個体を入手するか」は非常に重要な問題で、キーパー皆がかなり敏感になっている印象を受けた。

 でもこれって無毒ヘビのブリーダーの間でも考えないといけない問題じゃないかな。最近アメリカでもどこでも、この趣味の世界に若い人口が増えているように感じるけど、昔から居る「ちょっとウザ目のご意見番」的な人がもっとクラウドの「良識」として機能していかねばいけないのではないか?と思う。それは一方的に皆で「xが正しい、イケている」と決めてゆこう!という事ではなく、それぞれの立場から、周囲のバランスを見ながら発言できる人材がもっとたくさん居れば良いのにネ、という事だ。

2013年10月26日土曜日









#BLACKFISHを見た。これは飼育下のオルカが人に危害を加えて(殺して)しまった個々の事件例を軸に、実際の元飼育員との対話を交えながら、この生き物と人間との関係性を考えるというドキュメンタリー作品。この手の話になると過度に感情移入したメディア作品が多いのではじめはあまり興味を持っていなかったけど、野生下でオルカの群れがいかに家族をもとにした「社会」の中で生き、またそこから隔絶された孤独感とストレスの中で育つ事がどのように個体に影響を及ぼすかについて少し知る事ができた。

 比較的知られた事実だけど、オルカは普段家族を基礎とした小規模な群れで暮らし、「言語」に相当するようなフレーズを持っている。生活パターンや構成の違う個々の群れは方言に相当するようなサインを常にお互いに送りあっていて、それが包括的に「群れ独自の文化」のようなものを形成するのだそうだ。各国・各地の水族館がオルカショーに着目した7、80年代は、この事は殆ど知られていなかった。そのため世界のさまざまな場所から若いオルカが連れてこられ、一緒の水槽に入れられた。これは、例えば長州藩の人と松前藩の人と、蘇芳藩の人が一箇所に軟禁されているような状態だ。彼らの場合「同じ日本人で似たようなものを食べる」以外は、文化も、習慣も、似ているようで違うのだ。ひょっとしたらそのうち子供くらい出来るかもしれないが、精神的に充足した人生は送れるかと言えば、それはまた別の問題だ。またもしその中に会津藩の人が居れば、何かの拍子に長州藩士と決闘になる可能性もある。水族館の話にもどると、実際、飼育下で何も問題なく成長したオルカ同士がある日突然攻撃しあい、タンクメイトにケガさせたり、殺してしまう例は今までにいくつも観察されているという。このような行動は野生下では殆ど見られないそうである。

 ドキュメンタリーの中でストーリーのメインに据えられたフロリダシーワールドのオス「ティリカム」は今まで少なくとも3名の飼育員の死に関与しており、一部の専門家は30年に渡る水族館生活の中で、この個体が精神に異常をきたした可能性を指摘している。このオルカは数年前に自分も実際見たけれども、隔離された水槽の中で特に何をするわけでもなく、くるくると螺旋を描きながら水槽を上下しているのが印象的だった。

  脱線するけど、使役動物としての歴史の長いゾウも非常に家族の繋がりが濃い生き物で、若いときに群れから狩りだされて捕獲されたゾウがサーカスなどで使われる日々を過ごすうち、ある日突然凶暴化するケースというのが散見されるそうである。もちろん季節やホルモンバランスにも左右されるだろう問題だけど、ほかにも要因があるような気がする。ゾウやサル、オルカの脳を調べると、感情を司る分野が相対的に大きいのだという。本来一生涯を共にするはずだった家族との別離はこれらの動物にとって、癒やしがたいトラウマを残す可能性があるとはいえないだろうか。程度の差はあれ感情をもち、社会性のある生活を営む動物を飼育することはさまざまな工夫やケアを必要とするだろうし、またそのことの是非はともかく、過去に動物園が払拭しようとしてきた「見世物としての動物」のイメージを水族館もまた、脱却すべき時期に来ているように思う。

2013年10月24日木曜日

 今月中旬、日本では「オサンショウウオの会」大会がありました。今回はチュウゴクオオサンショウウオとの交雑問題を大きく取り上げたということで、その現場でもある京都はぴったりな開催場所に感じました。

 京都は、管理人にとっては学生時代短期滞在した場所でもあり、また初めて野生のオオサンショウウオを見られたのが忘れがたい思い出のひとつとなっている、愛着を感じる所です。それは西の確か亀岡という地域だったかな、山間部の道の駅のようなお茶屋さんで昼ごはんを食べ、ふとお店のすぐ下を流れる沢に目をやったらなんか当然のような顔をして「いた」んです。車や人でそこそこ賑わう交流地点のすぐわきだったので、まさかそんな場所で出会えると思わず大変びっくりしたのを覚えています。透明な浅瀬をゆっくり進んでいたオオサンショウウオは、不思議な病気に冒され最後は亀になってしまった「蔵六」のように、ぼこぼこした肌にぶつぶつとした暗色の点がたくさんあって、見るからにぬっとりと湿った大きな体に、驚くほど小さな目をしたへんな生き物でした。沢は浅かったのでもっと近くで見てやろうと小石の並ぶ砂州に降り立った所、どういうわけかそれに勘付いたようでまるで魔法のようにいなくなってしまいました。近くで教官やクラスメイトも見ていたので自分一人がゆめ幻を見たというわけではありません。いまでも、あの大きな体で、水しぶきも上げずいったいどのようにして雲隠れしたのかはなぞのままです。

 そんなオオサンショウウオを見てもうひとつ記憶に残っているのはその「手」です。なんか、人間の子供みたいなちょっと不気味な手をしていました。

2011年にセントルイス動物園で産まれた、オザークヘルベンダーの幼生

 アメリカにいるオオサンショウウオの眷属といえばヘルベンダーですが、特にオザークヘルベンダーの間でこの手(四肢)に異常のある個体が近年次々と観察されていることは、あまり知られていません。2011年に世界で始めてオザークヘルベンダーの飼育下繁殖に成功したミズーリ州セントルイス動物園の職員によると、野生下で四肢の先を欠いて産まれてくるヘルベンダーの数が年々増えており、同州内において局所的に60%以上にこの奇形が観察された場所もあるとのこと。他の両生類と同じく、呼吸などの生命活動の多くを皮膚に依頼するサンショウウオの仲間は、水中にある病原菌や汚染物質なども簡単に体内に取り込んでしまうため、環境の変化にとても敏感です。職員は、ヘルベンダーの保護活動にあたって水系から化学物質を厳密に排除し、またツボカビなど有尾類に感染するポテンシャルのある菌が接近しないよう細心の工夫をしています。このビデオなどでおおまかな取り組みを見ることが出来ます。

 うちの州にも南の山の中の方へ行けばイースタンヘルベンダーが見られるけど非常に珍しいらしいので、そのうち出会えたらいいなーと期待しています。それまでは、国立水族館のニホンオオサンショウウオに「お前もずいぶん遠くまで来たな」と話しかけながら夢を膨らませておくことにします。

2013年10月21日月曜日


シペどんって言うとどことなく日本昔話風で可愛い?キタミズベヘビ(Nerodia sipedon sipedon)です。もっとずっと北部、カナダの国境近くに住んでいた時も近所で見かけていた、アメリカ北東部ではいわば「お馴染みの」ミズベヘビの基亜種。ヘビはもともと皆泳ぎはうまいですが、ミズベヘビ達の泳ぎもまた大変見事です。ただこの仲間は水に入ると全身全く茶色にしか見えなくなって、図鑑で見るような見た目ではなくなってしまい、たまたま運よく近くまで来なければどの種類なのかまでは分からないことも多いです。上の個体も、はじめ「モールキングが泳いでるなんてめずらしい」などと思いましたが、カメラのレンズを通してあの独特な円錐型の顔と、キールのある鱗を見ることが出来ました。

 ペットとしてはあまり人気はありませんが、キタミズベヘビは大人になると大きさのわりにかなり見ごたえのあるヘビだと思います。体長は最大で1メートル強ほどだけど、実際目にするともっと大きく見える。まれに赤味を帯びた(エリスリスティック)個体が見られることもあります。水辺のヘビの他聞にもれず食べ物に関してはかなり貪欲なようで、死んだフナなどにも食いついていたりするし、またどうやっても飲み込み切れなさそうな魚にも一応トライするあたり、ガーターヘビと共通のスピリットを感じますね。そうそう!一番ビックリしたのは去年、北部の川までサケの遡上を見に行って、水面から飛び上がるサケの鰓蓋あたりに食いついている大きなキタミズベヘビを見た事。人間の大人でも一抱えくらいあるサケに躊躇無く挑戦するパッションに、「シペどん、やるな」と大変感心した出来事でした。

2013年10月19日土曜日

 昼間の気温もさることながら、夜急激に寒くなる日々が続いています。このあたり一帯(東海岸北東部)の季節は、長い夏から長い冬に一気に転換するような感じがあります。うちの玄関に居ついているトウブシマリスも先週の末を境に見なくなったので、冬眠に入ってしまったのかもしれません。湖のカメたちも目にしなくなりましたね。今日の午後、少し暖かかったので湖畔を歩いていた所、地元の人が釣り上げていた一匹のキバラガメが久々ぶりに見た野生のカメでした。おもしろかったのは、このキバラガメが一生懸命くいついている釣り糸の先には、釣り人の昨日の残りと思しきフライドチキンがくっついていたのです。カメも冬眠開始秒読みで駆け込み的にカロリーを欲してるんだなと思いました。ヨーロッパでは全く見かけない光景ですが、フライドチキンはアメリカ人の、特に子供や若者の間では結構ポピュラーな釣りエサです。

2013年10月18日金曜日


 街中にハロウィングッズが溢れる季節になりました。上は先週末に行われたシカゴのエキスポで出展された水槽のデコグッズ、右上になにげにツボにはまってしまった「ナガクビ赤ちゃん」も。こういうタイプのキモかわいさや作り過ぎない安いホラー感は、日本人の作るグッズではなかなか出せないもののひとつ。右下のアフリカマイマイ赤ちゃんなどバカバカしくも「とにかくキモがらせ(笑わせ)たい」という意気込みを感じます。

 ベンダーのレポートによると今回かなり盛況でオークョンやその後の懇談会も大変盛り上がったとか。今回はボールパイソンの変り種「フルスケールレス」が売りに出されていたみたいですね。写真を見た感じではナンかのイモムシみたいな雰囲気と質感の可愛いヘビで、ボールパイソン×スケールレスの相性はナミヘビのそれよりも良いのではないかと思いました(かわいさの点で)。ボールのスケールレスは今年の9月に100%遺伝する事が分かったばかりで、今回売られた個体は検証を行ったファームでとれた第一世代だということです。