2014年12月24日水曜日

「新種」の作り方


 爬虫類や両生類の新種といえば大自然の奥地で科学者や探検隊が発見するような印象がありますが、実はヒトの管理下からも生まれるんだという話を目にしました。リンク先は英文ですが、その新種のトカゲのブロマイドが掲載されています(可もなく・・・不可もなく・・・といった風なトカゲです)。この話の概要は、

 ・北米に住むハシリトカゲ(Aspidoscelis属のなかま)は、地域により亜種間交雑や単為生殖する事が知られていた
 ・亜種間交雑した個体は、それ以降単為生殖によってメスの子孫のみを生み出すことが分かっていた
 ・この時クローン体であるはずの仔個体は、親と違ったゲノム配列をもったトカゲになることがある
 ・さらに、米国南部の一地域には、遺伝的に三倍体のハシリトカゲが居る事が知られていた
 ・さらにさらに、1967年にNeaves氏により天然の四倍体の個体も発見されていた
 ・この不可思議な現象を実験室で再現しようという試みが行われる(単為生殖する三倍体メスと近縁種のオスを用いて)
 ・予想通り四倍体の仔がとれた。しかも単為生殖しはじめて、現在その子孫が200匹まで増えている
 ・これらの子孫は新種であるとして、「Aspidoscelis neavesi」と名付けられた

とのことです。ただこれを新種と言い切るには反対意見もあり、というよりかは「ハイブリッド・クローン」のような存在として、新定義を設ける必要があると考える人も居るようです。面白いのは、こういう亜種間交雑やその後のリプロダクションが、ふつうだったら何千世代もかかる新種形成の取りうる、別の道順として存在するという一例が示されたことで、「人工的な環境下での新種の発生」というセンセーショナルな出来事は、その確かめ算からの、副産物という位置づけなのだと思われます。とりあえず、そんな「新種」作りに興味のある人は、まずは野生下で亜種間交雑+単為生殖する生物を探してくる所から始めるとよさそうです(笑)。

 しかしこれを見ると学問には王道なしだが、「新種形成に王道あり」という事になって、系統学的ズルが横行しても良さそうなものですが。少なくとも自分がハシリトカゲだったら正直、チートしたくなると思います。なにしろニューメキシコかどこかの砂原をチョロチョロ走り回って、そのうち鳥かなんかにコツッとやられて死ぬか、人間に無暗に追い掛け回されたり、捕えられて「トカゲ sp」みたいな扱いになって、輸送中の箱の中で死ぬかみたいな人生だと思うので、それならば一か八かナウな子孫でも残して、ひと花咲かせようぜ!という気にもなってくると思います。


 そんなこんなで今年もクリスマスの季節になってしまいました。今年はこのブログの方もリンクしてくださる方が出てきたり・アクセス数も少し増えたり(といっても以前のアクセス数は1日5pvとかでしたが 爆)と、嬉しい変化がありました。反面、私生活では電化製品は壊れまくり思わぬ健康上の問題が浮上したり、喪中になったりと、あまりめでたい事もなかった大殺界・2014年だったので、新年の挨拶は出来ませんが、クリスマスのeカード用にちょちょっと作った絵を飾って、今年の更新を終了したいと思います(本当はあと1回まとめ記事を書きたかったですが、時間がとれるか分からないので)。それでは、みな様、一年間、こんな文字ばかりなブログを読みに来てくださりありがとうございました。良いホリデーシーズンをお過ごしください。

2014年12月20日土曜日

スナボアの近況


 ぷん太郎(♀)のケージにも雪が積もる季節になりました。

 というのは冗談で、チチュウカイヤモリのミニテラリウム用に購入した砂の余りを、スナボアにも入れてやった所の写真です。管理人がジャベリンスナボアだと信じているこのヘビ、WCならば、遠い昔こんな光景が本当にあったかもしれないと思うと、わくわくするような、少し切ないような、微妙な感覚に陥ります。ただCBという可能性もあるので、全ての想像は=妄想なのですが。

 ぷん太郎はもうすぐうちに来て3年目を迎えますが、環境に十分に馴染んだらしく最近何となくピカピカしてきました。そこでどこかにいいオスでもいたらいいなとたまに思うのですが、そもそもあまり流通量のないスナボア、加えてこの個体は種類もオリジンもあやふやなので、将来的にもし子供が出来てももらいてがないかもしれません。自分が販売者から聞いたぷん太郎にまつわる情報は、「おそらく」今までに2回下取りに出されていて、CB「かもしれない」「ロシアスナボア」のメスで南シベリア産「らしい」というものだけで、真相は本ヘビのみぞ知るという状況なのです。

 このヘビを見ていると、WCの両・爬のペットトレードの世界では、生体の出自やローカリティなどの正確な情報を提供する、信頼に足るようなシステムがなく、生き物を買う側にとっては結局の所供給者(輸入者やお店)による口伝えや、書面というアナログな手法で伝えられたデータしか、頼れるものがないことを残念に思います。そのような情報は時間とともに失われる可能性もあるし、またどんなに信頼できる会社やお店でも、手違いが起きる事もあるでしょう。そのため極論を言えば、現段階では、WCの生物は野外採集されてペットトレードに乗ったとたん正確な個体情報が失われる一方となり、たとえ生きもの自体としては元気に生きていたとしても、その種・亜種としては「死んだ」状態になっていきます。「死んだ」というのはその個体が将来的にその種・亜種のために貢献する可能性が、限りなくゼロに近くなったという意味です。

 しかし野生の生き物という天然資源が減少傾向にある事や、爬虫類や両生類が非常に長命な生き物だという事を鑑みると、愛好家個人個人が好きで細々と系統維持していた生き物が、我々の趣味を持続可能なものにしていくだけでなく、遠い将来種の保存などにおいて重要な役割を果たすようになる日が、絶対に来ないとは言い切れないのではないかと思うのです。突飛なアイデアに聞こえるかもしれないけれど、希少種のカメなどでは既に一般人のペットを保護団体が買い上げて、繁殖プログラムに取り入れるなどの動きは出てきています。(※ここから先は長い退屈なウンチクになるので、アップするか迷いましたが、日ごろWCの動物に関わりがあって、且つ時間のある人には面白いかもしれない話題だと思ったので、追記にしました。もっと読むのボタンから読めます)。

2014年12月16日火曜日

真夜中のゴキさんアカさん


 今年は12月21日が一年で一番日照時間が短い日だと伺いました。どうりで最近ランニング(という名の散歩)に出て公園などで道草していると、あれよあれよという間に真っ暗闇になるはずですね。そんな管理人地方ですが本日の気温は5℃弱くらいで比較的暖かく感じたので、何か生き物が見られるかもしれないと思い、真っ暗になった冬の雑木林を少し散策しました。ところが彼らの隠れ家をあたっていくうちに、出るわ出るわ森ゴキブリのオンパレードで。しかも成体ではなく、卵から孵ってひと月かそこらくらいの小さいサイズの虫がうじゃうじゃといました。時期的にもうこのまま越冬するのだと思いますが、これらの虫やナメクジ類が、冬の間乏しい資源でやりくりする他の生き物たちの助けになっているのかもしれません。

 そんな事を考えつつしばらく歩きましたが、他の生き物で見つかったのは写真のセアカサラマンダーだけ。先日に引き続きまたもや1匹しか見つけられませんでした。このサラマンダーは時と場所によっては「君たちもういいよ」位出てくることもありますが、同じ場所で似たような気温の時でも全く見られない事もあり、このエンカウント率の変動のふしぎを解き明かすには、まだまだ時間がかかりそうです。ただハッキリと感じるのは、こんなふうに殆ど物陰から出てこない彼らでも、空気中の湿度や気温、日照時間(≒天候、季節)などはかなり敏感に感じ取っているらしいということです。

 1匹だけ出てきてくれたセアカの尻尾は、先っちょに切れた跡がありました。この種類にどのくらいの再生能力があるのかは分かりませんが、ぽつんと出来た再生尾の部分もぷりぷりと瑞々しく、なかなかいいスタートを切っているように見えた。もっと近くでまじまじと見たかったですが、怖がって目に涙を溜めていた(ように見えた)ので気の毒になりリリース。放してやる時に気付いたんですが、セアカって暗い所で目が光ります。写真にも若干写っているかな。両生類にとってこういう細かい体の事は、一見質素で地味だけれど、360億年かけて熟考されたデザインだと思うとなかなか感慨深いものがあります。

2014年12月14日日曜日

家庭で「森」は作れるか

密生した森の一番外側、バナナの葉っぱで休んでいたヒルヤモリ。 因みに移入種。 2011年 ハワイ、オアフ島

 結論から言うと、作れるらしい。ちょっと前にエンジニアリング系の番組で聞いた話。

 この話題の発起人は、日本のトヨタ自動車で働くインド人のシャルマさんという、工業エンジニアである。彼は日本で働いている間に、日本各地にある鎮守の森などを着想源として、背の高い木と、中ぐらいの木と、低木とがテトリスのように上手く組み合わさった「コンパクトだけど非常に濃密な森」を、植樹によって再現できることを知った。専門家の下で植樹のボランティア活動をするうちに植樹にのめりこんだ彼は、インドの市街地にある実家の裏に土着の草木の苗木を用いて、「インド版鎮守の森」の育成に成功する。そこで彼はこの、人間による注意深い設計と、手助けを受けた手作りの「森」が、自然のままの状態の森林とくらべて10倍の速度で育ち、30倍の植生密度を持ち、結果として100倍もの生物多様性を保有している事を知った。

 そこで、車のエンジニアである彼は「トヨタが車をライン生産するのと同じようなコンセプトで、森も作れるのではないか」と考えた。というのもトヨタでは、良い品質の車を効率よく作るために「平準化」といって、異なる車種でも単一のライン上で素早く量産できるような仕組みを導入しているそうだ。転じて、自然の森林を領域ごとによく分析して、異なる種類の土着の草木を効率的に配置したモデルを作り、量産し、それを何層も重ねて行くことで、いかなる場所でも簡単に「小さな森」を出現させることが出来るという。エンジニアリングによって空間の無駄を極限まで削られたこの森は、成長すると空間の活用率が100%近くに達するので、人が歩いて分け入ることは不可能だそうだ。これを聞いて思い出したのは、2年くらい前にハワイのハワイ本島へ行った時の事だ。火山島でスペースが限られているためか、島の原生林は自然とかなり密生していて、横から見るとジャングルがキューブというか、壁のようになっている所もあり、その密度にびっくりした。そんな有様なので人間や家畜は立ち入れないが、太く絡まり合う樹木やツタ、気根の間をミツスイなどの小さな鳥類が自由自在に飛び回り、恐らく昆虫や両生類などの小さな生き物もどっさりいるであろう気配があった。

 シャルマさんは現在、小さな「森」をエンジニアリングする会社を興して、個人住宅や学校、企業や工場などの死んだスペースを緑化する仕事をしているという。またこのテーマに関して自らが働きかけるのだけではなく、世界各地の人々が自分で「森」を手作りしたい時に、遠隔地からでも地質調査を出来るように手配をするシステムを作ったり、ボタン一つでどのような草木や樹木をどのような配合で植えて行けばいいかが分かる、オープンソースのオンラインプラットフォームの開発にも着手しているそうだ。トヨタ式平準化の結果、ひとつの「森」を作る時のコストも最小でiPhone一個分くらいまで下げられるようになってきているという。個人的に、これほどぎゅうづめて木を植えると、100年後、1000年後はどうなってしまうのだろうと少し心配になるが、「自然をデザインし量産する」という発想を得て、あるていど形になるところまで来ているのだけでも素晴らしいと思う。因みにもうピンと来ている人も居るかもしれないが、彼が強くインスパイアされた日本人の植樹の専門家というのは、生態学者で植樹の達人、宮脇 昭氏である。

2014年12月13日土曜日

電球、今年の繁殖成績

 前回のウールマットの話に関して、コメントやグーグルの+、ブログむらのクリックなど、さまざまな反響をいただけ、大変ありがたく思いました。とても励みになりました。ひとつだけ補足したいことがあります。該当記事のコメントでも少し触れていますが、ウールマットはものによっては繊維が強いと感じるものがあるので、両生類の幼体や、サラマンダーでもあまり小型のもの、地面に潜っていくタイプの種類に使う時は注意が必要かもしれないと思いました。もちろん皆さんそれぞれのやり方があると思うので、おせっかいかなとは思いましたが、事故があってからではいけないので。このような生き物の場合は、代替案としては薄切りスポンジや業務用ペーパータオル(できれば漂泊してないもの)などをよく水にさらしてから使えば、手軽ですし、見た目はあまり良くないですが頻繁に取り換えられるので便利です。


 そんなこんなで今年もあと十数日を残す程度となってしまいました。日ごろかなり怠慢な管理人ですが、今年は思う所があり、作業部屋兼・爬虫類部屋の大掃除ならびに模様替えを開始しました。まずは積みあがった道具類・有象無象の整理からはじめ、昨日書籍の大箱と、工具類の大箱を運び終えたので、今日は空いたスペースに爬虫類関係の気狂い器具類を整理整頓するため、手始めに部屋の各所で跳梁跋扈していた電球たちをひとところに集結させました。

これをアップしたあと 新品のソケットと電球もうふたつ出てきました。

 で、出てきた電球の数を見て愕然としたんですが、こんなに買ってきた覚えないんですね。うちには現在、保温が必要な動物はヘビ4頭、極小ヤモリ1匹の計5匹しかいない上、そのうち2匹は同じランプをシェアしているので、予備の電球は最大8こあれば事足ります。しかし、今日こうして出てきた電球の数を数えてみたら、20個ちかくありました。どう考えても電球が自然繁殖してるとしか考えられません。しかもこれみんな新品なんですね。ズーメッドで沢山買い物するともらえる「ありがとうシール」みたいなのまで出てきたし・・・・・・。

 なぜこんな風になってしまったかと言えば、理由はうすうす分かってるんですが、管理人、趣味にまつわる道具類で何か新しいものが出ると脊髄反射的に買う癖があります。中でも得意なのは電球です(カラスか)。しかも買ってすぐに強力な痴呆を発揮して、買ったことを忘れてしまいます。当然、どこに収納したかまで忘れてしまうので、消しゴムよろしく、いつも必要な時に限って必ず出てこず、新しいものをまた買いに行く→忘れる→なくす→買う、この無限サイクルとなってしまいます。あなや。

 さらに、特定の物品の、特定の型が気に入ると、全く同じものでもいくつも買ってしまう癖も、この問題を根深くします。今回はそれで電球のほかに全く同じ防塵マスクが4つと、全く同じ色・型番の大型プラケも数個出てきました。誰も使ってないのに流木がゴロゴロ出てくるのもおかしいな。誤解を招かないように書くと、本人に物欲は殆どありませんしいわゆる収集癖もないので、やはりこの強力な痴呆が問題の核心かと思われます。

 一方たまに掃除すると、面白いものが出てきて楽しいこともあります。今回、爬虫類にまつわるものでは、ウィバリウムガイドの1号(←写真左)が出てきましたよ。本家のビバリウムガイドは布教用に実家に残してきたにもかかわらず、なぜかこれだけが海を越えてやってきたと思うと、可笑しいですね。たぶん全米くまなく探しても、ウィバリウムガイドを持っているのは自分だけでしょう、感動で胸が「じ~ん」と熱くなります。物品の「レアさ」とは、こんなにも相対的なものなのかと。

 ウィバガの下に畳んであるのは、引っ越す時に友人がくれた「野毛山動物園のカメ手ぬぐい」です。絵柄が可愛らしいのでずっと壁にかけてあった(飾ってるつもり)のですが、これを期に、グッズ置き場としてどこか所定の場所を作れればと思います。この手ぬぐいもきっとアメリカ中探しても、なかなか見つからないでしょう(じ~ん)。では、無駄話はこのくらいにして、また掃除に戻りたいと思います。

2014年12月11日木曜日

もう、ミズゴケには頼らない(年金にも)


 このブログでもリンクしていただいている、「自然と遊ぶ」のSigeさんが、日本のヒキガエルの冬眠床 を作る時床材の一部に水槽の濾過機用マット材を使っているのを拝見したのがきっかけで、これはボアコン用のウェットシェルターにも転用できるかもしれないと思い、やってみました。材料は・・・・・・、ともったいぶるのもばからしいくらい単純なアイデアなので、よかったら上の写真を見てください。濾過機に挿入するウールマットを定型に切り、きれいな水をひたひたに入れて使うだけです。本当は汚れが見やすいように白色のマットが良かったのですが、近所のサプライショップには青いのしか売っていなかったので、それを使っています。ボアコンはある程度厚みのある材の方を好むと思うので、薄いマットしか手に入らなかった時は最低でも3センチ分位になるように重ねると良いと思います。(※安全上の補足事項があります)。


 人間に対しては一番よそよそしいウダ美ですが・・・こういう新しい仕掛けを作ると真っ先にやってきて使ってくれるのが、彼女の良い所であります(脱皮前なせいか?)。このブログを書いている時点で設置から1週間ほど経過を見ているのですが、うちにいるボアコン3頭とも普通に活用してくれているようです。水分もしっかり蒸発してるらしく、ケージに手を入れるとほっこりとしています。

 ウェットシェルターの敷材については、管理人の場合、今までいろいろな紆余曲折がありました。理想を言えば100%ミズゴケが良いのですが、大きなヘビだと一度に沢山使うし、再利用できないので、しょっちゅう変えてやろうと思うととても高くつきます。ミズゴケはまた、自然な色合いが良い感じな一方、知らない間に不衛生になっていても分かりにくいのも気になっていました。それで代わりとなる様な素材として布(タオル地)やスポンジ、小さく切った人工芝、玉砂利、くしゃくしゃにしたペーパータオルなどなど順番に色々試していたのですが、保水力に難があったり、水分がほどよく蒸散してくれなかったり、ヘビが嫌がって入らなかったり・・・重かったり掃除が面倒だったり・・・と、なかなかうまい事ぴったりくる材が見つかっていなかったので、今回のウールマットはかなりイケている!と自画自賛しているわけなのですね。洗濯ネットに入れて洗えるし。

 我が家では今年の頭に大きいロンギが少し体調を崩したこともあり(実は今でも若干の健康不安が残っている)、湿度対策だけでなく、水分補給のやりかた全体的にけっこう頭を悩ましてきました。なにより、獣医師のアドバイスを聞いたり、また自分でもこの一年頻繁に南米産の生き物と接し、多くの時間を彼らのいる環境の中で過ごしてみて、ボア類をはじめ熱帯のヘビ達の好む水の摂り方が少しづつ掴めてきていたので、それと比較して自分が自宅で用意してやれる環境では理想とは程遠く、結構フラストレーションがたまっていました。まず、自然に近い環境の中にいるこれらのヘビ達は、喉が本当にカラカラで他に選択肢がない時を除いて、基本的に水入れの水はほとんど飲まないことに気付きました。そのかわり、水遣りの時一時的にできる細い流れのようにチョロチョロしている水を好んだり、雨の様にサーっと体に水分が滴っている状態、しかもそれが一定時間続くと、おもむろにその水を飲みだしたりします。でもそれは、彼らの感覚で考えると当然の事なんですね。自分がもしもヘビでジャングルに暮らしていたなら、手近な場所で比較的安全に手に入る最も新鮮な水のソースは、例えば隠れ家の壁をつたってくる雨水などだと思います。だから、そういうのに似た状況で水分補給をしようとするのは、全く自然なことと言えます。でもそうすると、ボアコンだってイグアナやカメレオンみたいにケージにミスターや、ドリッパーがあった方がいいのだろうかとか、色々考えてしまうわけです。ちょっと話がウェットシェルターから逸れすぎましたが、こういう細かい工夫の積み重ねによって、ペットたちの生活環境が多少マシになっていく可能性があるので、たまに考えてみる価値はあるような気がします。

2014年12月7日日曜日

オオカミウオ試食


 突然ですが、最近オオカミウオを食べた話を。

 外国で生活していると、日本では当然のように行っていた生活上の習慣をあきらめないといけない事があります。たとえば「首まで風呂に浸かる事」。管理人はヨーロッパに住んでた時も含めてもう4年ほど風呂に浸かっていないのですが、特に今くらいの季節になってくると不便さが身に沁みます。家にはバスタブがあるものの、日本と違ってこちらでは体を洗う場所=バスタブの中がスタンダードなため、肝心のバスルームの床に排水口が配備されておらず、なかなか気軽な気持ちでは入れないんですね。それで、このままだと循環が悪くなるのではないかと心配になり、ホット・バスやジャクジーがあるスポーツジムにも入ってみましたが、そういう所ではあまり「日本の風呂」的雰囲気は味わえません。

 もうひとつきっぱり諦めた事に「うまい魚介類を食べる事」があります。管理人は幼少時、母親の郷里の山口県で毎年ぴちぴちのおいしい海産物をたくさん食べさせてもらっていたので、魚や海藻の味は少し気になる方です。一方、米国では食品衛生法によって生魚はいったん必ず冷凍しなければダメなのに加え、その冷凍設備が日本のと比べてどうも劣っているらしく、解凍後店で売られる頃には味も食感も変わり果てた状態になる魚が多いです(だから調理法もフライが多い)。鮮魚の冷凍・冷蔵はきちんと行えばより魚の味を良くするとも言われていますが、元来魚を生食する文化のなかった所なので、冷凍食品売り場に常に養殖ティラピアがあるだけでもラッキーなのかもしれません。

キノコ 乗せすぎか・・・。上の黄色いのはレモンの皮のすりおろし。これも乗せすぎ、

 反面、地理的に大きく離れた所に住むということは、今まであまりなじみのなかった食材・具材と出会えるということでもありますから、いい事もあります。このオオカミウオなどはその一例でしょう。日本でもたまに手に入るらしいですが、上野の吉池でしょっちゅう張り込んでた自分からすると、エンカウント率は非常に低いと言えましょう。今は、どうなのかな。とにかく陸揚げされると不細工さが目立つ魚なので、きっとこれからもメジャーな食材になることはないでしょう。

 肝心の味の方ですが、取り立てて何も言う事のない、ふつ~~~の白身魚でした。焼いたら妙に小さくなったのと、微妙にワキシーなテクスチャのため、深海魚だなという事は分かりましたが、それ以上でも、それ以下でもない。ただ、このワキシーさはアブラソコムツやバラムツなどに通じるものを感じたので、これらの魚でお腹をこわす人は注意した方が良いかもしれません。まあ、オオカミウオを一本買いして、一人でまるまる食すなどでなければ大丈夫でしょう。そもそもそんな人いないか。というわけで今回もいよいよ尻すぼみになって参りましたが、日本に帰省したら下関唐戸市場横のお寿司やで「ずり」握りをおなかいっぱい食するぞと、いやに具体的な決意を新たにしたところで、エアー筆を置きたいと思います。

2014年12月5日金曜日

誰にでも逆鱗はある


 ハイポボアのレルモントフが脱皮して、ぺちゃんこにのされた脱皮殻がケージの床にくっついてしまった(なぜ?)ので、丁度いい機会とばかりに巣材を全て取りのけて大掃除を行う事にしました。ケージの半分の床拭きプロセスが終わったので、今度はもう半分の方へ・・・とヘビに被せておいた業務用ペーパータオルをのけてみたらあらビックリ、なんと無茶苦茶怒っていた(写真上)。しかも噴気音抜きで即バンと来る方の怒り方で。このヘビはうちへ来て二年以上経つけれど、本当に何をされても怒るという事がなかったのでちょっと驚いた。人間と同じく、ふだんどんなに大人しいとされる個体にも、怒りのツボはあるんですね。気を付けたいと思います。

2014年12月3日水曜日

恋は浮力に乗せて


 ワニの交尾が水中で行われるというのは、本で読んだりして知識としてはあったけれど、今まで実際に自分の眼で見たことはなかったので、あまり実感としてどのようなものなのかはよく知らなかった。何の変哲もない今日と言う、寒くてどんより曇った典型的東海岸の水曜日はしかして「ワニの結婚」という、このぼんやりとしたコンセプトが急にはっきり現実性を帯びた日でもあった。動物園で朝、たまたまキューバワニ - Crocodylus rhombifer キューバン・クロコダイルの温室の前を通りかかると、オスのミゲルと、メスのローズが二匹揃ってぷかぷかしていたのだ。哺乳類特有の発想で「ワニでもじゃれて遊ぶことがあるんかな。」と通り過ぎようとし、「ンなわきゃない」と思い直して戻ってきて見たところ(厳密には、あるらしい。→2015年2月23日追記)、交尾中だった、というわけなのだ。ローズは終始何かが気に食わないらしく目を見開きキバをむいて、こんな動物にまたがろうと思えるのは同じワニのオスをおいて他にいないと思われた。キューバワニは小型だけれど非常に気性の荒いワニで、野生下では生息地の破壊と近縁種間での遺伝子汚染によって絶滅が懸念されているため、この二匹の残す子孫は、種の未来を担う大切な子供達ということになる。ミゲル君、お疲れ様。ローズさん、がんばって元気な卵を産めますように。

2014年11月30日日曜日

トレッキングに潜む危険性

昨日は ブログむらのアイコンを沢山押してくださった方がいらっしゃたようです。
 どうもありがとうございます。

 昨日はけっこう歩き回ったのに、セアカサラマンダーの子供が1匹見つかったきり。今、非常に寒いので(サラマンダーとはいえ)心配だなあ、と思いつつ、隠れ場所に戻してきた。というのもここのところ管理人の住む東海岸に、北極から季節外れの寒気団が降りて来ていたんですね。それで先週などは気温がマイナス10℃くらいまで下がる日々でした。ちゃんとした冬用のフィールド道具を持ってない管理人なので、この調子で行くと秋から続いていたガサガサ活動がナシ崩し的に終了となりそうです。

 ところで、「野生の両生類を見て歩く」という遊びはそのうちいつの間にかただのトレッキングになってゆく(#金のサラマンダー)と以前書いた事がありますが、今年はそれを比較的まめにやってみて、ほとんど常に単独でフィールドに行っていたせいかも分かりませんが、これは結構危険も多い趣味だなという事に気が付いたのでした。今日は、今期のガサガサ活動のまとめとして、これまでに危なかったと思ったポイントを整理しました。とりたてて真新しいアイデアはありませんが、日本でも共通するものもあるかと思うので、来年の春に向けて自分と、他のフィールダー諸氏の注意喚起の足しにもなったらと思います。


 危ないポイントその1 ケガ。それも大ケガの危険性。前から思っていたんだけど、アメリカやヨーロッパの自然公園などへ行くと、十数歩先は断崖絶壁というような環境でもなぜか柵が取り付けられていない事があるんですね。そういう場所には「落ちると死ぬからね。毎年何人も死んでいるからね。」という看板がさりげなく掲示されている事が多いのですが、なにせさり気ないので、うっかり見落とす事がありえます。またイモリやサラマンダーはあまり人が立ち入らないような場所にこそいたりするので、好奇心が勝ってどんどんフィールドの奥の方に入っていってしまい、そこで足を挫いて帰れなくなる等の間抜けな展開も有り得るでしょう。フィールドでは自制心を忘れず、リスクを避けて、歩くときは10歩先も確認しながら遊びたいです。それにしても崖や急勾配の場所などにかぎってやたらと下を覗き込みたくなるのって何なんでしょうね。臼井義人現象と勝手に名付けてるんですが、自分の好奇心の強さは自分が一番把握していると思うので、十分に気を付けたいと思います。

 危ないポイントその2 野生のいきもの。上の写真はまさに昨日撮ったやつなんですが、私の住むエリアでは、このようなかんじでいきなり野生の動物がピョンと飛び出してくることがあります。管理人は鹿のボディランゲージには詳しくないので、このオスジカこの後、どういう行動に出るのかなど見当も付きません(とりあえず両手をわたわたと動かしながら目を見開いて威嚇?しておいた。←サルやイヌ科には多分逆効果なので注意)。猛禽やキツネくらいなら大歓迎ですが、もっと山深い方へ行けばクロクマ、マウンテンライオンにボブキャット、コヨーテなども出るらしいので、事前のリサーチと、相応の準備が大事だなと思いました。それから忘れてはならないのが、大動物だけではなく、微小なダニ類や蚊なども脅威になりえるという点。今年は日本でもデング熱が流行して騒ぎになりましたが、気候が暖かくなるにつれて熱帯産の病気が北の方に上がってくる事がこれからも増えていきそうな気がします。これらと同時に気を付けたいものにマダニが媒介する感染症もあります。北米にはライム熱という不治の感染症を引き起こすダニ(体長0.5㍉~)がおり、注意が呼びかけられていますが、近年日本でも土着のマダニの媒介する感染症(重症熱性血小板減少症候群-国立感染症研究所のサイトより)で死者が出ている事もあり、今後も防虫対策はしっかりやっていった方がよさそうです。

 あぶないポイントその3 「人」。個人的に、外国のフィールドでも一番危険なもののひとつは、他人ではないかと思います。日本人同士の間だと、「山や自然の中では皆仲間」のような感じで、互いに助け合ったりする素晴らしい空気感があるので、分かりにくい感覚ですが、外国では基本的に相手がどんな人間なのか、何が目的で接近してきているのかハッキリするまで、十分に注意した方がいいと考えます。リスクを減らすためにも、理想的にはフィールドでは常に複数名のグループでいられればよいのですが、実際は友人ともなかなか時間が合わせづらかったり、たまたま通りかかって一人で探索することにする事などが案外多いのが現実なので、このへんのバランスが難しいと感じます。

 並べてみたら案外少なかったですが、こんなところでしょうか。個人的に「内省しすぎる可能性」というのも入れたかったんですが、そんな奴自分だけだと思ったので、次点としました。というのも、管理人の場合、静寂に包まれた雑木林の中、倒木をつっついてワラジムシを眺めたりしていると、突然!世の友人たちは二人目が幼稚園に上がったり、30年ローンで家を買ったり、社長になったり、離婚して再婚したり、いろいろアクティブにやってるなかで、朽木をほじくって喜んでいる自分はいったい何をやっているのか???と、雷に打たれたような衝撃が走ることがあるんですね(笑)。でもときどき、ハイキングに行ったきり蒸発する人って時々いらっしゃることを考えると、山で来るこの内省のビッグウェーブも一枚噛んでたりして?とか、勝手に憶測しているんですよ。いやだなーこわいなー。今日のところはとりあえず、これらを教訓としながら(へたに内省しすぎず)、来年もフィールドを「安全に・さらに楽しく」をモットーに工夫を盛り込みつつ活動していきたいと思います。

2014年11月20日木曜日

「女の子のための飼い方ブック」


 「猫と一緒に暮らす女の子のための飼い方ブック」という新しい本がアマゾンで売られていた。オビを見ると「一人暮らしでも 旅行に行っても 仕事をしていても 結婚・出産しても 大丈夫! あなたの毎日をHappyにしてくれる猫を飼おう!」と書いてある。そこで世の不公平に敏感な管理人は、爬虫類バージョンのカバーを作成した(↗)。被写体は、自分の身近にいるなかで最もコネコに似ている爬虫類だと思った、動物園のカパーヘッドをチョイス。さあ、表紙はできたので、あとはどなたか内容のほうをお願いします(笑)。また、女性向けだけだとフェアじゃないので、「爬虫類と一緒に暮らす女の子の飼い方ブック」という、男性向けの続編もできればよろしくお願いします。

 冗談はさておき、生き物を飼うという事を「女性のための」という目線で見るのは、もしかしたらけっこう画期的なのかもしれない。「仕事」に「旅行」に「結婚・出産」にと、並べれば確かにかなり忙しそうだし、そんな忙しい時間割の中にメンテナンスの時間を捻じ込んでいき、さらに能率的に癒されようと思ったら、こうした指南書も時には必要なのかもしれない。ただ個人的に、そんなに忙しいならば哺乳類は諦めて、なんかの幼虫でも育てたらどうだろうかと思う。例えばモンシロチョウとかアゲハのアオムシはネコや爬虫類と違って子供をひっかいたり、かみついたりする可能性もないし、場所も取らないし、医療費も、光熱費も、水道代も食費もかからない(食草をむしってくるだけ)。そのうえ、最後チョウチョになって飛び立つ時にはどえらい感動がある。家で沢山飼えば、葉っぱをかじるサワサワという音に癒される。冬は一切世話をしなくていいから、それまで一年間後回しになってきた自分の事をできる。昆虫は、一部を除いてアレルゲンも殆どなく、人畜感染症の危険もないので、乳幼児がいても安心だ。それに、多分工夫次第で「オシャレに飼う」ことも出来る。そしてそして、最終的に自宅のまわりに昆虫の数が増えることは、多分周辺環境にとってもいいし、エコだ。そんな事から管理人はつねづね、時代は哺乳類よりも、爬虫類よりも、むしろアオムシを求めている!と感じているのだが、これは多分、「猫と一緒に暮らす女の子」の方々からも、「爬虫類と一緒に暮らす女の子」の方々からも、相手にされない発想だという事は分かっている。


2014年11月16日日曜日

最後の一枚


 写真に対して「その場の情景がだいたい伝わればOK」という、恥ずかしいくらい低いハードルを設定している管理人は、携帯カメラを愛用しています。ただやはり細かいところまでちゃんと撮りたいなと思う時、コンデジ以上の能力があるカメラがあると便利ですよね。それで以前は野歩き、山歩きの際に三脚と一眼をブラブラさせながら行っていたこともあったのですが、最終的にここ3年ほどは、軽くて持ち運びやすいソニーのデジイチに落ち着いていました。上の写真は3年間、たまに土まみれや釣り餌まみれになったりしながら頑張ってくれた、そのカメラで撮った最後の一枚。これを撮った直後また野歩きに出かけたのですが、バックパックの中がどうにも騒がしいと思って開けてみれば、消毒用ゲルのボトルによる自爆テロが行われた直後でした。ポケット一枚挟んで物陰に隠れていたこのデジイチ君は地図やメモパッドなどの仲間達と共に全身にゲルを浴び、儚くフィールドに散っていったのであります。

 それにしても今年の、管理人の電化製品運の無さたるや。このデジカメもそうだし、アイパッドも2枚割ったし、でっかいパワーサンも1個、ちょっと笑えるくらい木端微塵になったし(しかもより高価なソケットからショートさせた)。奮発して買ったエスプレッソマシーンもめげたし、パソコンも総取り替えになり、買ったばかりで喜んでいたアイフォンも翌日速攻で石の床に落として、見事に欠けました。なんだか今書いていて「今年はお金がないナァ」と漠然と思っていた訳が分かりました。そうそう、そして極め付けは今朝、愛車にキーを差し込んだら、寒さでバッテリーが中途半端に上がってたらしく、車内に入ってきたアイドリングのガスで死にかけ&涙ちょちょ切れたという。無暗に走ってエンジンを痛めたくないので、さっきレッカー車を呼んだ所です ←今ココ

 不幸自慢はこの辺にしますが、こうして並べてみるとやはり大殺界なのかという気がいたしますね。母親がアメリカまでわざわざ電話して教えてくれたんで間違いないのですが、管理人は「火星人」というやつで、今年の運勢は実に最悪なのだそうです。因みに美輪明宏や、美川憲一、ピーター 、マツコ・デラックスや ミッツ・マングローブ も火星人なんだとか。オカマのご加護がありそうな星回りなんですねえ。何だか納得してしまいました。では、お迎え(レッカー車)が来たようなので今日はこのあたりで。

2014年11月12日水曜日

かわ・ハラー「かわいい」と言う問題

人間の考える動物界における「かわいい概念」の代表例 - 砂のお風呂に入る、宅のハムスター


 ヒトが生き物を「かわいい」と言う時、それは同時に「かわいくない」生き物の存在を暗示する。例えば一般社会でいえば、上の写真の様なハムスターは「かわいい」とされる。小さくて、白っぽくやわらかい毛並みがふかふかで、足が短く黒目がくりくりしていて、木の実や葉っぱを食べ、人間と仲良しだからだ。一方、「かわいくない」生き物の典型的なものは、だいたい今挙げた形容詞の逆を考えると分かりやすい。即ち、大きかったり、黒っぽくて、節くれだった足をゴソゴソとさせ、瞳はギラギラと闇夜に輝き、固い毛並みかもしくは無毛で、食事は血や肉を貪り、人になつかない。生き物を「かわいい」と言う時、私達は無意識のうちに自分達にとっての良し悪しの判断を下しているのである。自然物である生物に対して「いい」と「わるい」を、自分の尺度で勝手に裁いているという事になる。

 我々の大好きな両生類や爬虫類の場合、どことなく親近感を感じさせるカメやカラフルなカエル、半分家畜化された一部のヘビ、トカゲ、ヤモリなどの場合はまだマシだと言えるけれども、それでも一般的には「かわいくない」に分類される生き物達だ。「かわいい」という言葉は本来、言い手の存在を脅かす可能性が低そうで立場的にも劣勢のものに対して使われ易い言葉なので、「ひょっとすると脅威になる得るかも」と想像をかきたてる両爬の場合、根本的に不利だ。もちろん「かわいい」のセンスは千差万別なので彼らにも愛好家が沢山いるが、中には逆を行って、この両生類や爬虫類が世間で「かわいくない」とされている前提を踏まえ、だからこそ好きなのではないかと思わされる人も存在する。「かわいくない」「こわい」とされている生き物を愛でている自分、という構図を作ることが目的の人も居るかも知れない。そんな時、両・爬は自意識補完薬としても作用するのだ。

 話をもとにもどすと、このように「かわいい」というアイデアはかなり主観的かつ、自動的に「かわいくない」側への差別を促すという倫理上の欠点がある。これには実害もあって、最近読んだこの話によると、たとえば自然環境や、生物種の保護活動においても、人々の関心や寄付は「かわいい」「きれいな」動物・・・例えばトラやクジラ、パンダやウミガメ、ホッキョクグマなどに集中し、それらの動物の存在を根底からささえる「縁の下の力持ち」の、小さな植物の仲間や昆虫類、クモ類、ヘビやカエルなどは無視される傾向にあるという。この現象は、人間の美的感覚が巡り巡って生物の多様性を失わせる可能性があることを示唆していて、危惧されることなのだ。

 まとめると、何かの生き物を見て「かわいい」という事は、スーパー上から目線なだけでなく、自然の神秘漲る「環境」に対して我々ヒトの粗末な尺度を押し付け、あわよくばその良し悪しを判定してやろうと考える傲慢、さらに「悪し」の側に分類されようものならいつの間にか滅びてようが知ったこっちゃねーという、あんまりな人類の暗黒面の発露となりかねないのである(※あくまで管理人個人の考えです)。よって今日、生き物に対して安易に「かわいい」という事は、ハラスメントの一種であると勝手に決定した所存であります。生き物をやたらと可愛さメインで語っていくことがあたかもめちゃめちゃ恥ずかしいことみたいな社会通念を作りませんか。本能を抑え込む最もパワフルな原動力は「恥ずかしいと思うきもち」だと思うので。

 しかしなんで、ここまでガタガタと能書きを書いたあげく両爬虫類の大大大の味方である管理人がロボロフスキーハムスターを3匹も飼っているのか、それはもう、理屈抜きでかわいいから生き物として大変興味深いからです。

一般論的「かわいくない」の一例、バルカンヘビガタトカゲ(Ophisaurus apodus)

お願いだからそんな目でこっちを見なさんな。

2014年11月10日月曜日

不定期更新「盗まれた世界」3

ノマド生活者


 1965年、ヘンリーA.モルトはクラフト食品※1で販売員の仕事に就いていた。この仕事はモルトに会社のワゴン車と、フィラデルフィア市の準郊外を自由に巡回出来る環境を与えていた。週末、動物園を訪れるために、モルトはこのワゴン車を勝手に乗りまわした。6歳頃から始まった彼の爬虫類採集癖-学校帰りに美しいキングスネーク達を入れた布製サックを背負って歩いていた-は、成長と共により多くの種、より危険な種への探求へと移行していた。当時25歳のモルトは実家の地下室で多くのコブラ、ガラガラヘビ、ドクトカゲ、そしてビルマニシキヘビ達を養っていた。

 クラフト食品は若くてエキセントリックなこの販売員を歓迎していた。雇われてからほんの一ヶ月たらずで、モルトの描いたコブラのイラスト-直立し、フードを広げた-はクラフト食品の社内誌The Kraftsmanの表紙を飾った。ページをめくると、サーモンローフのチェダ-ソースがけのレシピの隣に、モルトに関する記事が掲載された。クラフト食品の特派員が派遣され、モルトと彼の「普通じゃない趣味」について報道したのである。記事の中でモルトは嬉々として、彼の趣味が必ずしも法に則ったものでは無い可能性をほのめかした


 次にモルト君は、コレクションの中で彼がおそらく最も価値があるだろうと考えている個体・・・オールトラリアから連れてこられた美しいダイアモンド・パイソンを紹介しました。彼はこのヘビの為に90ドル(※2を支払ったそうです。モルト君によると、このダイアモンドパイソンはオーストラリアとパプアニューギニアの一部にしか生息せず、実際のところ急速に絶滅しつつあるのだということです。そのためオーストラリア政府はこれらのヘビの輸出を禁止しているのです。

 「ではどうやってあなたはこのヘビを連れ出したのですか?」

と聞くと、モルト君は黙って、しかし私にむかって策謀めいた一瞥をよこしたのであります。


 この時期、マヨネーズの瓶をカウントしカビの生えたチーズのクレジットを返金をする一日が終わるとモルトは、両親の家の彼のベッドルームに引きこもり、当時動物園や映画スタジオの間で出回っていた動物商名簿をもとに海外のディーラーに手紙を書いたのだ。モルトは、動物園ですら持っていないような珍しい生き物のみを欲していたので、当時野生動物の輸出に制限があったり、アメリカ合衆国との取引を禁止された国々-オーストラリア、アルゼンチン、共産国の数々-のディーラーに接触した。「人がやらないような方法もやってみた」、のちにモルトは言った。「例えば私がナショナル・ジオグラフィックで、宣教師がヘビを手に持っている写真を見たとする。そこで、彼にも手紙を書いてみる。こうした手紙の殆どは、届目的地に着く前に失われた」





(つづく)
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著者Jennie Erin Smithは科学と自然史に精通し多くの受賞歴を持つフリーランスのサイエンス・リポーターであり、頻繁にTimes Literally Supplementに掲載されている。彼女はフロリダで数年間環境リポーターを務めたことがあり、そこで著作Stolen World (2011)を書くのに必要な多くのコンタクトを得た。

※1 乳製品で有名な大会社。
※2 2014年現在の貨幣価値だと672ドル相当。

2014年11月5日水曜日

ひとりぼっちのオタマジャクシ


 上の写真は近隣を勝手にパトロールしていた時に見つけた、紅葉真っ盛りのカエデ。本当にこんなオモチャのプラスチックみたいな色をしているんですよ。周囲を賑わわせていた森の小動物達は、もうそれぞれ巣穴へ入って眠りについている頃。きれいな風景は一年間の「自然劇場」の最後のお楽しみ、冬という新たな準備期間へ入る前の、華やかで、楽しいエンドロールのような感じなのかも知れない。葉っぱはそれぞれ思い思いの色に変わると、苦痛もなく潔くぱらりんと枝から取れて、つかの間のフライトを楽しんだと思ったら、もういつのまにか土へ還ろうとしている。よくできているなと思う。人生も、終わりは出来ればこんな感じであってほしいものだ(笑)。

 奥に写っているのはひと夏の間、さまざまな話題を提供してくれた湖(池の様に見えるが、写真左手の方へ細長く続いている)。思いかえせば今年もここで色々な生き物との出会いがあった。この湖の周囲は季節的に小さな水たまりができるため、カエル・ウォッチの時は立ち寄るポイントになっていたし、嵐の後にここで拾ったオタマジャクシが、その後元気に巣立っていったこともあった。釣ったバスをリリース時に放ったら、水面で失神状態になった魚を潜水艦の様に浮上してきた大きなカミツキガメが、頭からバリバリ食べてしまったこともあった。トウブニシキガメの「マック」や、釣られて迷惑そうにしていたミシシッピニオイガメ達も、きっと今ごろこの湖のどこかで寝ているに違いない(「マック」はちゃんとカメらしい格好で寝てるのか不安が残るが・・・)。

オタマ隠してしり隠さず

 こんな時期なのに、湖の淵のあたりで一匹だけ居たオタマジャクシを見つけた。とても用心深くてこちらが少しでも動くとピャッと逃げてしまう。最終的に、水底のふわふわとした泥に半分めり込んで、安心したらしい所を写真に撮ったが、いったい何の種類のカエルなのか見当も付かない(大きさや模様からウシガエルでないと思う)。こんな晩秋にオタマの形態ということは、このまま冬を越すのだろうか。

 近年北米でも北の方では、日本のアカガエルの仲間のウッドフロッグや、ほかにもアマガエルの仲間のグレイツリーフロッグ、スプリングピーパー、コーラスフロッグなどは、仮に冬眠中全身が凍結しても条件が揃えば春に元気に蘇生してくる(!)事が分かってきている。このオタマがいったいどういう作戦を立てているのかは知らないが、無事に冬を越せるといいなと思う。

2014年11月3日月曜日

朗報・・・?アミメの単為生殖

単為生殖するなら・・・飼ってあげてもよろしくてよ

 アミメニシキヘビが単為生殖することが、世界で初めて確認されたとか。日本語版のナショジオにも詳しいストーリーが載っているので、詳細はそちらを参考にしてほしいが、大まかな内容をまとめると、アメリカの動物園で生れてから11年間オスとの一切の接触もなく暮らしてきたアミメニシキヘビのメスが突然61個の卵を産み、なんとそのうち6個からメスの仔が孵ったという。仔の遺伝情報を調べたところ、メス親と同じことだったことから単為生殖したことが確定されたというもの。これは全アミメ飼育者にとっては朗報・・・なのだろうか?今回殖えたメス親は全長7メートル弱、体重100キロちかくある個体だという。荒ぶる丸太ん棒のようなアミメ達が、さらに自力で増えられるというのは、個人的にはどちらかというとホラーに近い話である。

 注目したいのは、記事内でも言及されているように、以前から進化的新奇性と見なされていた両生類・爬虫類の単為生殖が従来考えてこられたよりもかなり一般的であるというのが、だんだん解き明かされてきているという点。コモドオオトカゲが単為生殖出来ると確かめられた時の驚きは、まだまだ記憶に新しいし、日本ではオガサワラヤモリやメクラヘビの一部なども単為生殖することで知られ、ほかにも国内でミズオオトカゲが単為生殖したとされる例ある。種によっては、単為生殖で生まれた子が親と全く同じ遺伝子セットを2つ備えることになるため、親に色彩モルフがあった場合スーパー体になるなどの不思議な事が起こるのも、日ごろから世話をしていた者にとっては嬉しいサプライズとなるのではないだろうか。

 にしてもアミメでこの調子ということは、ボールも単為生殖したりしないかな。今日の写真は、前から密かにかわいい思ってたブリーダーさんの、エンペラーピンのメスなんですが・・・。買ってきて、じーっと眺めていればそのうち増えてくれたりするのでしょうか。そしたら生れた仔を売って、ボール御殿を建てようぞ。って、動機が不純すぎるか。

2014年11月1日土曜日

イモリツボカビの新たな脅威

とある日のイモリ・ラボにて 管理人に気づいて手をふっている?ブチイモリ

有尾類キーパーの方にぜひ知ってほしい話を読んだ(日本語のニュース記事はこちら。より詳しい説明は国立環境研究所のこのページでも見られる)。アジア産有尾類の保有するツボカビの一種が現在、欧州産のイモリ・サンショウウオの間で猛威を振るっており、今後さらに北米にまで達する可能性が非常に高いという話だ。この菌はイモリツボカビ-Batrachochytrium salamandrivorans(Bs)といい、ベルギーの研究所での実験によると新旧大陸の多くの有尾類に対して感染力、致死率ともに非常に高く、特に欧州から地中海沿岸域に生息する種の多くや、管理人の住む北アメリカで代表的な種であるブチイモリなどがこの菌に感染した場合、致死率はほぼ100パーセントに達するという。

 専門家によると、このアウトブレイクの重要な要因に両生類のペットトレードが挙げられるという。イボイモリやシナイモリをはじめ、アジアの有尾類の中にはペットとして人気があり頻繁にペットルートにのる種があるが、これらの種の中にはBs菌に対して対抗性、耐性があったり、感受性を持つものが広く見られるいう(日本のアカハライモリもこの菌に対して感受性が確認された)。現在欧州で猛威を振るっているBs菌の発生源は、こうして人為的に持ち込まれた生き物達だという。管理人はちょうど先日オランダのファイアサラマンダー棲息数があっちゅう間に減少して今や絶滅の危機、という話を読んで心を痛めていたのだが、陰の立役者としてこのツボカビ菌がからんでいた部分も大いにあったのだろう。

 この事態、日本でアジア産の両生類を飼育している分にはほとんど影響がないとも思える事かもしれない。けれども、こうした「未知の外来病原菌」が今後も出てくる可能性もある。今回アジアの有尾類がBsに耐性を示したように、例えば外産種達はへっちゃらでも、日本のイモリ・サラマンダー達にとっては重症化する菌などが、これから絶対に出てこないとは言い切れない。またカエルツボカビ症におけるアメリカザリガニのように、一見全く無関係な種が要員となって、在来種たちに間接的に予期せぬダメージを与えるということも考えられる。有尾類に限らず外国産の生物をペットとして飼う場合、衛生管理のきちんとした専門店からCB個体を購入し、個体同士は触れさせない、飼育水はできれば消毒してから下水に流す(外に捨てない)、死んだ個体は焼却する、フィールドで使った靴や器具はきれいに洗ってそのつど殺菌する、等の「基本」を今一度思い出しながら挑みたい。また、飼育している複数のイモリ・サラマンダーが次々と死ぬなど不審な事が起きた場合は、最寄りの獣医大学の病理学研究所に連絡をとる事を勧める。一例としてカエルツボカビ症の時、我々愛好家にも相談窓口を提供してくださっていた麻布大学病理学研究所のリンクを貼っておく。

 今日はあまり時間なく急いで書いたためちょっとゴチャゴチャした文章になってしまったかもしれないけれど、愛好家間で共有する必要のある事かと思ったので、どうしてもメモしておきたかった。それもこれも先週、研究者の間でも現在入手が非常に困難だという「旧世界のイモリ・サンショウウオ」という新しい本をたまたま貸りられる機会があり、そこで欧州産有尾類の多くが、その生息状況が本当の本当に風前の灯状態だということを具体的に見せつけられ、ガーンときた事も大きいかもしれない。

2014年10月31日金曜日

歳をとった生体の世話について、気付いたこといくつか

ある日の近所の公園にて

 管理人が初めてペット店から買ってきたガータースネークは、今思えばたいした世話もしなかったのに11年ほど生きてくれた。連れてこられた当時、そのヘビは既に亜生体以上の大きさだったので、ひょっとするともっと年をとっていたのかも知れなかった。ガータースネークはヘビとしては比較的寿命の短いグループなため、最後の頃は鱗の感じや動きも明らかに「おばあちゃん」という風になり、食欲はあったがだんだんに空気が抜けたようになって、そして枯れ葉が枝からぱらっと落ちるような感じで死んでいった。両生類、爬虫類は時に、びっくりするほど長い月日を生きる。飼育下にある場合、野生での平均的な寿命を超越して長生きすることもしばしばある。このことを思い出すきっかけになったのは、最近動物園で老齢個体の世話を手伝う機会が多くなった事だ。基本的に一匹一匹が沢山の適切なケアを受け、大切にメンテナンスされるそういう場所では生体はとても長生きで、40年近く園で展示動物として働いている(?)カメやトカゲやヘビなどがざらにいる。そしてそれを取り巻く人達も、彼らが最後まで生命を全うできるよう、色んな工夫を凝らしていることを知った。その中から4つ、重要かと思うポイントをメモした。最近、飼っている生き物がなんとなく年をとってきたなあと感じる他の飼育者の参考にもなるかもしれない。高齢の両生類・爬虫類のケアは、管理人が興味を持っていることのひとつでもあるので、今後も新たに思いだした事があれば付け足す。

1.ハンディキャップがある

 歳をとると出来ないことが多くなるのは人間と全く同じ。比較的よく見るのが、目が見えなくなる個体。ヘビなどに多いが、外見的に明らかに水晶体が混濁しているものの他に、見た目はあまり変わりないのに実は見えてないというケースもある。両爬虫類は優れた嗅覚を持つものが多いのでそれでも問題なく生きていける事が多いが、念のため餌や水は口の前まで持っていって、きちんと摂れているか毎回確認することが必要になる。また熱を感知できるボア・パイソンの仲間は、視覚を失ったことによって餌と人の手の区別がよりつきにくくなる場合もあるので注意する。

 筋力の低下や関節炎も比較的よく見られる。これは特に樹上棲種において問題になる。体をうまく支えられなくなったり、関節にかかるプレッシャーが不快感になって、のぼり木などにあまり登りたがらなくなる個体もある。その場合、ケージ内容は模様替えをして、バリアフリーなレイアウトにし、わざわざ木に登らなくてもバスキング出来るようにしたり、水入れは浅くしてすべり防止の為に中に人工芝を入れてみたり、工夫する。樹上棲ヤモリなどは、平らな面が地面と水平になるように設置した角材を入れたりして、楽にとまっていられるようにする。

 かなり老化が進んでくると、多くの個体はハイドボックスの中など特定の場所で静かに一日を過ごすようになり、糞もそのままそこでしてしまったりするようになる。不衛生にならないように、数日に一度は個体を動かして下に汚物がないか確認する(ついでに軽くハンドリングして体をほぐしてやる)。脱皮等も失敗しやすくなるので手伝う。

2.水分は全てを助ける

 仮に乾燥地帯出身の生き物であっても、水分補給は頻繁に(できれば毎日)行う。水入れの器の水換えをするだけでなく、霧吹きなどで軽くミスティングをする。適切な水分補給は呼吸器や循環器、泌尿器などの負担を軽減するだけでなく、先に書いた脱皮不全などを予防することにもなるので、個体が若かった時以上に気を付ける。蒸れには注意する。

3.食餌内容に気を付ける

 牙やクチバシの角質が摩耗して、上手にエサが取れなくなる個体が出てくる。歯が定期的に抜け落ちるタイプの生物も、再生速度が遅くなるので、そのような状態であっても食べられるようにエサの内容を検討する。本来の生態に即した餌を控えめ・こまめに与えることが重要になる。両生類などは特に、なるべく代謝を一定に保つようにする。

4.苦痛を取り除く

 最初に少し書いたように、生体が野生での平均寿命を大幅に超えて生きていると、普通では見られなかったような障害や、病気にかかるようになったりする。腫瘍などはその代表選手かもしれない。明らかにコブの様に盛り上がってくる腫瘍などは特に、触るとどことなく苦痛を感じているようなそぶりを見せる個体も居るので、なるべく触らないようにし、程度によっては治療、または安楽死の選択も必要になるかもしれない。

2014年10月27日月曜日

永遠なれ、農家の心


 近所の道を通るたびに街路樹の色が紅葉でどんどん変わっていく季節になった。イベントシーズン到来である。爬虫類のイベントはこれから冬にかけて小休止というところだけれど、空いたスペースに管理人の内緒の趣味(別に内緒にする必要は全くないのだが)でもある産業動物、不動産、銃火器等のショーが入るので、出かける頻度にはあまり変化がない。先週末は、多分今年最後になるだろう爬虫類の即売会と、古本市にて欲しかったイモリ・サラマンダー関係の本を掘り起こし、その後犬と馬の競技会を少し見てきた。

 南に150キロほど下った地方の中規模都市で行われた爬虫類の即売会はここ3年ほどで目に見えて規模が小さくなった。売られている動物も八割がたがコーンスネークか、ボールパイソンか、フトアゴヒゲトカゲに変わった。多分それしか売れないのだろう。記憶のある限り遡れば以前は面白いアジアのヘビ等を売っていたブリーダーも、このごろは明らかにブリーディングストックと思われる個体達を売りに出しており、当歳のヘビ達は皆コーンスネークだった。ヨーロッパと違い、アメリカの爬虫類の即売会は生き物が売れなくなると比較的賑わいを見せていたイベントでもさっぱりと中止になったりするので、苦肉の策なのかもしれない。日本でも主要都市への人口流入と地方の過疎化という傾向が止まらずに問題化しているが、こちらアメリカでも、いわゆる一般庶民の「体感景気」のイマイチさが長く続いているので、雇用を求めた若者がなんとなく都市部の方へ移動してしまい、こんなふうに地方のホビー文化的活性は低くなっている場面を目にする。


 「いいコーンとれたよ、持ってきな」風に大小色とりどりのコーンスネークを見せてくれたおじさん。写真からこのおじさんだけを抜き出して、背景を青々とした畑に変え、手に持っているものをナスとか、トマトとか、チーズやハムに変えても成り立ちそうなところがちょっと面白い。こういう場面で、爬虫類に限らずペットのブリーディングとはどこかしら農業に通じる、「農民の趣味」なのだと感じる。毎日コツコツと田畑を耕し、牛に干し草をやる事と、ヘビのペーパータオルを換えることは、概念的には似ている。そのこつこつとした日々の帰結として毎年訪れる収穫の喜びが、現代人の中の眠れる農民魂を刺激するのだ。

2014年10月22日水曜日

不定期更新「盗まれた世界」2

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 その日私は、ウェイン・ヒルが言った通り、プールサイドのテーブルにぽつんと座っているハンク・モルトを見つけた。夕方近かった。モルトがその時手にハイネケンのビンを持っていたかどうか、私の記憶は定かではないが、この日以降私は彼がこれと全く同じ状況・セッティングにある所を、一度ならず見ることになった。

 モルトは痩せて背の高い50代中盤位の男で、そしてトム・クラッチフィールドに起こった事の顛末について、大いにおもしろがっているように見えた。彼は(クラッチフィールドと同じく)タトゥーとポニーテールの美学を注意深く回避しており、かわりに清潔に整えられた短髪にカーゴパンツを履き、殆ど陸軍兵の様に見えた。彼は非常に聡明である一方、些細な事で狂騒状態に陥る人特有の、出っ張った眼をしていた。そして、彼が何年もかけてたった数頭を手に入れるためにあれこれ考えを巡らせていたマダガスカルのフチゾリリクガメ達について、どこかのやり手がやってきて、まんまと(それも一気に75頭も)盗み出すのに成功した事について、かなりうっとおしく思っていると述べた。

 モルトはあのエキスポ会場に居ながらなんの看板も掲げず、スローガンも、ブースもなく、動物すらも持っていなかったのである。モルトにとってこの「ハーペトカルチャー」と呼ばれるもの―ミューテーション、デリカップの山々、そして見せかけのサイエンス―が持つ魅力は限定的なものであった。彼は言った、自分は野生の生き物とその美しさ、その希少性、そしてそれらを得るための場所へ分け入るために生きていたと。そして今日び見られる動物達は皆、既に物語性を失っているのだとも。モルトが自身を恥知らずの熟練密輸人ではなく、「希少動物専門の特殊業者」と銘打っていた数年間、世界のどこかから動物園に現れる彼の布製サックからは、トカゲやヘビ達が取り出されたのだ。彼はサックを一つづつ開けながら、這い出る生き物についての物語を説いて回ったのだ。それは効率的な動物の売り方ではなかった。それは戯曲であった。一つの演目をやり終えるには何時間も要した。

 「それはヘビにまつわる『ロマンス(冒険譚)』だったんだ」と彼は言った。ふたを開けてみれば、それは見るに堪えない歪んだ『ロマンス』だったのである。


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著者Jennie Erin Smithは科学と自然史に精通し多くの受賞歴を持つフリーランスのサイエンス・リポーターであり、頻繁にTimes Literally Supplementに掲載されている。彼女はフロリダで数年間環境リポーターを務めたことがあり、そこで著作Stolen World (2011)を書くのに必要な多くのコンタクトを得た。

2014年10月18日土曜日

家庭でできるエコテロリズム

 ふざけて過激なタイトルをつけてしまったが・・・最近カエルやイモリをもっと手軽に観察したい欲求が高まってきていたところへ、落葉のシーズンが到来したのである。この短い期間、まだまだ8割がた葉を残す木立ちと地面の落ち葉が格好の目隠しを提供している事に気が付いた管理人は、ついに裏の雑木林にこっそり池を掘るという暴挙に出た。情報を付け足すと、管理人の住む家は地域の自然センターの管轄するこの保護林に直に面しているものの、バックヤードから30メートルほどはなだらかな下り坂が続き遊歩道もないため、時折現れる不届き者が空のペットボトルを放り投げて去っていくのみの場所となっていたのである。普段から枯れ枝をまとめたり、サラマンダーを見たり、ゴミを拾ったりしている管理人がここで何かしている事を不審に思う者はいない。チャンスである!シャベルとツルハシに安全靴を履いて分け入った。好機とみれば即実行に移すのがテロ成功の秘訣だ。


見つかったら怒られること必至である

 そして池の原型が出来上がった。写真だと小さく見えるけれども、成人男性二人が楽に横になれる程度の大きさがある。奥は深めで手前がスロープになっている、カエルに優しい設計。本来ならこの後水を逃さないようにするためのライナーを敷くべきところだが、もう少し手直ししたいのと(オタマ大星雲を見るためには、少なくとも深さ1メーターは欲しいところ)、土壌が粘土質な事、そして見つかって叱られた場合即埋め戻せるようによく踏み固めるだけにすることにした。果たして、この池が自然の一部として機能するかどうかは春が来るまで分からないが、楽しみにしてときどき覗きに来ることにした。

 余談だが、実は、こんなふうに他人の敷地に穴を掘るのはこれが初めてではない。小学生の頃は、我が家では禁書とされていた「みどりのマキバオー」の単行本を区の緑地に穴を掘って隠していたし(ご丁寧に地図まで作っていた)、大学時代同級生らと結託して、意味もなく校庭に直径4メートル・深さ3メートルほどの大穴を掘ったこともあるのだ。さらには調子に乗った誰かが人間トランポリンをやろうと言いだし、穴の上を覆ったシーツをそれぞれが持って作った粗末なトランポリンで、級友一名が病院送りになった。もちろん助手達にあとで厳しく追及され、寂しく大あなを埋め戻したのが記憶に残っている。何にせよそれ以来、叱られることを気にしていては「大義」は貫けない事を学習したのであった。そして「大義」の後始末には大きな苦痛とわびしさが伴うことも。

2014年10月17日金曜日

不定期更新「盗まれた世界」1

 春にオーダーしてからずっと積ん読状態になっていたジェニー・スミス「盗まれた世界」をやっと手に取った。今2章ほど読んだ所だが、日本語にしてだれかと共有する意味のある本かもしれないと思うようになった。この本は爬虫類のペットトレードに関するほぼ(※)実話に即したドキュメンタリーで、300ページ以上あるハードカバーなので興味の無い人には苦痛かもしれないが、近代博物誌動物園爬虫類のペットトレード「ハーペトカルチャー」の歴史密輸トム・クラッチフィールド、などなどのワードにピンと来る人にとっては面白いと思う。ブログにこうして全文をアップするのは多分、米国著作権法の定める「フェアユース」の範疇ギリの所だと思うので、本文の二次活用、特に商業的な利用はご遠慮ください。適度な所でぷちぷち切りながらの気まぐれ更新になると思うので、それでも良ければご覧ください。ではここから始めます。※「著者によるはしがき」にて後述する3人の登場人物のみ仮名になっている。
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著者によるはしがき

 この本はインタビュー、裁判記録、時事録(出版されているもの、いないものに関わらず)をもとにして書かれた。ほぼすべての引用文はインタビューから、それ以外のものも宣誓証言から起こされている。ベンジャミン・バックス、ステファン・シュワルツ、そしてカール・ソレンセンの3人以外、名前も全て本名である。
Part 1:The Kraftsman

 出展者達は自分達のテーブルにつき、積み上げられたデリカップ―食料品店で小さなオリーブやクリームチーズを分配するのに使われるプラスチック・コンテナ―の列に目を走らせていた。一つ一つのカップには丁寧に空気穴があけられており、中にはトカゲやヘビの赤ん坊が入っていた。

 時は1996年の8月、ナショナル・レプタイルブリーダーズエキスポは今まさに始まったばかりだった。オーランドホテルの大展示場数室分に及び、出展者たちは布製の看板のもと、デリカップの群れを展示していた。看板は漠然と、プロパガンダ的スローガンを掲げていた:商業化を通した保護科学的経済活動を通して(種の)存続を保証する。出展者たちはほとんど全員が男性で、そのうち少なくとも半数はタトゥか、ポニーテールか、爬虫類のパターンが描かれたTシャツを着ており、幾ばくかの人々は上記全ての特徴を備えていた。

 かつて人目につかないものだった爬虫類を飼育するという趣味は急速な成長を見せ、新しい名前を得た。「ハーペトロカルチャー」である。一見「ハーペトロジー(爬虫類学)」に聞こえるが、真の爬虫類学者になるためには博士号が必要である。しかしある朝あなたが目覚めて、飼っているヘビが卵を産んだことを見つけた時、あなたは「ハペトロカルチャリスト」になる。出展者たちは爬虫類を普通ではない色、またはアルビニズムなどの変異のために繁殖し、それらの操作は動物達の価格をただただ上昇させた。「貴重で素晴らしい個体を海外から手に入れるには、以前は輸入業者や密輸人に頼るほかなかった」とある出展者は述べた。しかし現在は「ハーペトカルチャー」のおかげで、彼らはその珍品類―依然として価値があり、しかし純正に法に則った―を自宅で創出することができる。そればかりか、これまであまたの種を繁殖させたことによって、彼らは危機に瀕する爬虫類を絶滅から救っているという。

 これらにまつわる諸々の事はとても高貴に聞こえた、ただニューヨークタイムスが数週間前に一面を割いて伝えた、マダガスカルの特別保護施設から盗まれた非常に希少なヘサキリクガメ達のニュースを除いては。記事は、盗まれたリクガメのうち何頭かはこのオーランドのエキスポで浮上してくる可能性を示唆していた。さらにこのエキスポの3日前には、ここから一時間ほど先のフロリダ州ブッシュネルのダイナーで、合衆国魚類野生生物局のエージェントが61匹のヘビと4頭のリクガメ(フチゾリリクガメではないものの、マダガスカル産の種)を密輸しようとしていたドイツ人を逮捕していた。ブッシュネルのダイナーでこのドイツ人は、いったい誰に会う予定だったのだろうか?エージェントはその事については触れなかったが、エキスポの出展者達は皆知っていた。

 フロリダ州ブッシュネルに住んでいる爬虫類のディーラーは1人しかいなかった。彼の名前はトム・クラッチフィールドと言った。エキスポでは、クラッチフィールドは一番目立つブースと見栄えのする看板、そして生え抜きの動物達を持っていた。彼のテーブルの横にはペアで750万円の値段を付けられた2頭のアルビノイグアナ―微動だにしない美しき怪物たち―がいた。クラッチフィールドは口ひげを蓄えた小柄だががっちりした男で、そしてとにかく異常に苛立っているように見えた。野生生物局のエージェントが、ひとりのドイツ人などよりも何かもっとずっと大きなものを取り潰そうとしている事はだれの目にも明らかだった。

 このエキスポのオーナーであり、地元フロリダの出でもあるウェイン・ヒルは、こうした騒ぎをよそに私を彼のペントハウスの居間に招いていた。半ダースほどいた彼の仲間達に囲まれながら、ヒルは座っていたカウチの背をくつろげ、爬虫類のビジネスについて、そしてそれがどのようにしてここまで大きくなったかなどをもったいつけながら話した。ウェイン・ヒルは引退した燃料技術者で、それまでに何年かをサウジアラビアで過ごしていた。彼は生粋の石油マンであったが、それ以上にひとりの爬虫類好きでもあった。砂漠で―ヒルは言った―彼はひとつのビジョンを持つに至ったという、まるで神やモーゼでも目の前に現れたかのように。

 その演説は今までに何度も繰り返されてきた節があったが、仲間たちは聞き入っていた。その砂漠で―彼は続けた―ヒルは、爬虫類のディーラー達が自由に生き物を売り買いできるフォーラムを、心に描いたのだという。彼が初めてのエキスポを開催する以前は、ディーラー達の活動の場は動物園やサイエンス・シンポジウムに向けてなどのみに限られていたと、ヒルは説明した。世界的に野生動物のトレードが忌避されるようになりゆく中、ヒルは純粋にディーラー達のためだけのエキスポを開催した。フロリダ州オーランドのハワード・ジョンソンホテルの小さな一室にて、1990年の事だった。今、その6年後の現在、我々はもっとずっと大きなホテルの会場にいる。「ニューヨークタイムスはなぜ、ヘサキリクガメがこの会場に現れると考えたのでしょうか?」と私は彼に尋ねた。ヒルは気色ばんで、誰か敵愾心を持った人間、おおよそどこかの動物園関係者か「動物愛護ナチ」による考察だろうと述べた。私はこれ以上、あのドイツ人やトム・クラッチフィールド、またはあの明るいエキスポ-あたかもオルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』に出てくる胎児達のように、無菌のコンテナからヘビが取り出される-が、未だ密輸人に何の用があるのか、などについては聞かないことに決めた。

 ところがおかしなことに、ヒルは私に、彼が個人的にとても好感を持っているというひとりの密輸人を紹介したのだ。ヒルが言うには、彼なしには、今オーランドで見られる素晴らしい生き物たちの多くは存在しえなかったという。そして次の日、私はハンク・モルトに出会ったのである。

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著者Jennie Erin Smithは科学と自然史に精通し多くの受賞歴を持つフリーランスのサイエンス・リポーターであり、頻繁にTimes Literally Supplementに掲載されている。彼女はフロリダで数年間環境リポーターを務めたことがあり、そこで著作Stolen World (2011)を書くのに必要な多くのコンタクトを得た。かわいいアメフクラガエルのイラストはMark Mandicaによる。

2014年10月15日水曜日

フトアゴ飼いの姉さん、事件です(※兄さんも)

とあるエキスポにて ベンダーのおばちゃんが連れてきていたフトアゴの一個体。あきらかにおばちゃんの生活様式を「習得」している (うそ)

 爬虫類って実際、どのくらい頭が良いのか?という話題は以前から度々触れているけれど(話その1その2その3)、また何か面白い事が分かったようなので忘れないうちに書き留めておく。

 最近とあるサイエンスジャーナルに載っていた話によると、爬虫類の一種Pogona vitticeps(以下フトアゴヒゲトカゲ)を使った実験によって、彼らに他の個体がやっている事を観察して習得する、社会的学習能力があることが初めて確かめられたという。イギリスのリンカーン大学の研究員チームによって行われたこの実験の概要は、まず12匹のフトアゴヒゲトカゲの中から1匹を「お手本役」として、ケージの中に設置された網戸を開け(網戸はふすまのように横滑りに開く)、隣の部屋にあるミルワームをゲットするトレーニングを受けさせた。そのうえで、残りのトカゲ達の半数にはこの「お手本役」がドアを開けてミルワームを取るところを事前によく見せておき、残りの半数には何も見せなかった。こうして区別された2つのグループが各自網戸つきケージに放された時、果たして、事前にお手本を見たグループのトカゲたち全員がミルワームをとることが出来たのに対し、何も見なかったグループのトカゲは殆どミルワームまで辿り着くことが出来なかったという。

 実験でフトアゴヒゲトカゲたちが見せた「社会的学習能力」というのはとても高度な認知能力が絡んでくるもので、従来ヒトをはじめとする一部の動物にしか見られない行動だと思われてきた。他の個体がやっている技を獲得してそれを正しく使うためには、目で見たままの行動をまねるだけではなく、その裏に隠された「他者の行動の真の目的」という、抽象的な概念を理解することが必要だからだ。自然界にはオウムが人間の言葉を喋るような感じでいわゆる「サルマネ」が出来る動物は多いものの、「社会的学習」が出来るのは一般的に高等とされる動物に多く、まさか爬虫類にもそのような能力、というか脳力が備わっていた事は最近まであまり知られていなかった(因みに類人猿にはとても洗練された認知・社会的学習能力が備わっている事が分かっているので、このサルマネという言葉は彼らにとってたぶん非常に失礼であり、NGワードになるべきでしょう)。

 個人的に思うのは、この実験の甲乙は置いておいて、こうしてフトアゴが人為的に作られた環境の中で本来の習性から一歩はみ出た「ふすまを開ける」という能力を発揮してくる所も面白いと思う。動物園の生き物などを見ていても、本来単独生活者だったり全然別の地域で暮らしている爬虫類同士が何らかの理由で同居を余儀なくされた時に、個体間に予期せぬヒエラルキーが現れたり、共同作業をはじめたりする場合があると分かってきている。爬虫類に限らず個体の隠された能力というのはこうして今までの常識では遭遇しないような題材に対峙した時、浮き彫りになるものなのかもしれない。自分の人生においても、例えば何かとんでもなくありえへん事態が起きたならばそれはひと皮剥けるチャンスと捉えるべきなのかもしれない。またひとつ爬虫類に大切なことを教わってしまった(のか?)。

2014年10月13日月曜日

すごいぞ、モリモリ

いつも グーグルの+を押してくださるみなさん ランキングのアイコンを押してくださるみなさん どうもありがとうございます。
日本列島は今強い台風が来ているとのことで 自宅に缶詰になっている人も居られるかと思い つまらない話ですがもうひとつ更新します。


 森や自然を構成するひとつひとつの植物、一匹一匹の生き物に等しく役割がありそのどれもが大切だという事は、もはや誰でも知ってる事実だと思うけども、ある特定の生物に的を絞って彼らが具体的にどの位エコシステムに貢献しているかに注目すると、びっくりするような事実が隠されていることがある。

 秋になってその辺でよく見かけるようになったセアカサラマンダーは、プレソドン科というムハイサラマンダーの仲間である。彼らは読んで字のごとく成体になっても肺を持たず、呼吸は皮膚に頼っている。日本のサンショウウオの中ではハコネサンショウウオも、科は違うけれど肺を持たないサラマンダーとして知られている。彼らは喉元をピコピコ動かしていかにも息をしてます風に見えるけれど、それは匂いの分子を鼻に多く取り込むための行動で、実際の呼吸とは少々異なるのだそうだ。話を少し戻すと、先日このムハイサラマンダーの仲間に関する面白い話を読んだ。それ曰く自然界における彼らは、単なるエコシステムの構成員どころか「知られざる森の守り人」レベルの存在なのだという。

 ムハイサラマンダーの仲間が多く住む落葉樹の森において、毎年地面に降り積もる落ち葉は有機物であり、多くの炭素を含んでいる。地表に棲む微細な生き物がこれをちぎって食べて、消費した時、炭素はメタン(温室効果ガスの一種)などと共に、二酸化炭素として空中へ放出される。アメリカ農務省森林科のハペトロジスト達の実験によると、ここに自然な密度でムハイサラマンダー達が介在して、積極的に微細な生き物たちを捕食した場合、見かけによらず大食漢な彼らの活動によって落ち葉の分解スピードがぐっと緩やかになるのだという。その結果、森林約70メートル四方あたり計100キロ近い炭素が気化せず地中に戻ることとなり、同時に相応分のメタンの排出も抑えられるという。この、炭素の土壌への吸収量はサラマンダーがいなかった場合と比べて13%増だという。これは読んだだけではあまり実感がわかないけれども、積もり積もれば(実際は雑多な要因により結果は異なってくるとはいえ)周辺の大気に影響を及ぼしそうな数字であり、世界の片隅でひっそりとケシツブみたいな虫を食べているサラマンダー達が、もしかしたらめぐりめぐって地球の天候を左右するほどのパワーを秘めているかもしれないということになる。おもしろいと同時に感動だ。因みに多くのサラマンダー達はこうして蓄えたエネルギーから、自分が生き永らえるのに必要最低限の分だけをとり、あとは卵や繁殖行動のために皆使ってしまうという。それが証拠にサラマンダーの仲間は、鳥類などの捕食のリストの中では下位の方に位置するという。彼らを食べても相対的に得られるカロリーが多くないからだ(野菜のキュウリみたいなものか)。どこまでも慎ましく、まさしく「清貧」という言葉の似あう生き物であると、よこしまで無駄だらけな存在である自分などは思う。

 しかし日本語でイモリが「井守り」、ヤモリが「家守り」ときたら、こんなふうに森を守るサンショウウオは「モリモリ」という事になる。モリモリといえば管理人が大学時代大変お世話になったオカマの先輩と同名になってしまうが(どうでもいい情報)、日本のオオサンショウウオなどがこちらで「ペッパーフィッシュ」とか言って紹介されているのを見るとワンプレート500円のファストフード店みたいな響きで威厳もくそも無く、オオモリモリの方がまだマシという気がする。

2014年10月12日日曜日

ガサガサ活動 その四

Carphophis amoenus amoenus

 週末、隣州の雑木林でガサガサ活動。湿った落ち葉溜まりでほっこりしていたイースタンワームスネークを見つけたので無理矢理ひっぱりだしたところ、ヘビなのに明らかに涙目になっていた。(自分でやったくせに)何かかわいそう、と気の毒になった・・・次の瞬間!臭腺から何か分泌物を出したらしく、何とも言えない匂いがあたり一帯に漂った。ナミヘビのムスク的な匂いとは似て非なる、例えて言うならケガした所にバンドエイドを貼ったことを忘れて水仕事をし、うっかり蒸れちゃった傷口みたいな、有機的としかいいようがなく、くさいと言えばくさい、だが何となくもう一度嗅ぎたくなるような匂い(笑)。この分泌物、意外としつこくて洗ってもアルコール綿で拭いてもなかなか落ちず、帰りの運転中も気が散って散って仕方がなかった。仮にもしこれで事故った場合、イースタンワームスネークの種ステータスが「無害」から「死者1」に変更になるのか、とか、もしそうなら自分の墓石にワームスネークの絵を彫ってほしいとか、こんな変なヘビを見たおかげでどうでもいい変なことばかり考えてしまった午後だった。

2014年10月8日水曜日

金のサラマンダー

Eurycea bislineata

 突き詰めようとすると、ちょこっと手軽に楽しめるガサガサ活動から、いつの間にかただのトレッキングになっていくのがイモリ・ウォッチの落とし穴かもしれないと気付いた。それでも近場を適当にフラフラするだけで済んでいる自分などはまだまだ甘ちゃんで、ハードコアなウォッチャーになってくると、テントとザイルを持ってアパラチアの山々へ籠もりに行くという。日本に住んでた時も思っていたけど、有尾好きにはおっさんがやたらと多いのもこのあたりに端を発している気がする。その傾向はアメリカでも同じで、こちらの有尾好きの人々と話す時、休日にお弁当もって何時間も沢のまわりをウロウロし、そこに湧く小っちゃいイモリを見てきゃあきゃあ騒ぎたいおっさんという特別な種族に高確率で出会う。愛すべき人達である。

 しかし、鬱蒼とした森林を黙々と歩いているうちに、ときどき「ご褒美」的にサラマンダーとの出会いがあると、鮮烈でどこか原始的な喜びがあることは疑いようもない事実である。上の写真は昨日行ってきた、綺麗な沢で見つけたフタスジサラマンダーの成熟したメス。フタスジサラマンダーとは先週も出会っているけれど、その時撮った「平均的なフタスジ」写真と比べると、この個体がいかにとび抜けた美人なのかが分かる。ほぼ無班でラインも控えめで、全くいやらしさのない繊細なシャンパンゴールドが眩しく、はっきり言って森の宝石と言っても差支えないかと!・・・というのは管理人の勝手な意見ですが、個人的に好みど真ん中すぎて、嬉しさのあまり踊り食いしたくなってくるほどだった(注:しません)。

 この個体は、お腹に卵がいっぱい入っていた。今年もがんばって、きれいな仔を沢山残してくれればいいな、と思う。


 これも同じ沢で見つけた、ちょっと変わり種。日暮れが迫る中、木片をどけたら居た、4センチくらいの小さなサラマンダー。薄暗がりの中だったので何だかよく分からなかったが、なんとなく気になったのでフラッシュをつけていくつか写真を撮って帰ってきた。後で知人に聞いたところ、恐らくノーザンダスキーサラマンダー(Desmognathus fuscus fuscus)だと思うが、もしかしたらアレゲニーマウンテン・ダスキーサラマンダー(Desmognathus ochrophaeus)の可能性があると言い、もし後者ならかなり珍しいという。サラマンダーだとこういう場合、「珍しいんだぜ、うっひょ~」という派手なリアクションにはあまりならず、「小っちゃくて茶色いけど、珍しいんだねェ・・・」と、お年寄りが孫に「偉いねェ・・・」というあの感じに似た受け答えをしてしまいがちなのも、パターンとしてあるかもしれない。

2014年10月6日月曜日

守るべき隣人

 突如、自分はボールパイソンも飼ってないし、コーンスネークも飼ってないし、繁殖もやってないし、このままイモリ~イモリ~みたいな記事ばかり書き続けていたら、そのうちブログを訪れる人が誰も居なくなるのではないかという危機感にとらわれた。というわけで、このあたりでカメの事でも書こうと思う。ちょっと画像けれど、粗いが下の写真を見てほしい。


 これは先月24日の、南バングラディシュのひなびた漁村での光景だそうである。カメはここの溜池で飼われていたバタグ―ルガメ(ヨツユビカワガメ/ノーザンリバーテラピン、Batagur baska)のメス。右で泣いてるおばあさんは、もう明らかかもしれないけれど、16年間池の大ガメを世話してきた「飼い主」である。

 バタグ―ルガメは主に南アジアの河に棲む大型のカワガメで、生息地の破壊と、現地では卵や肉が食用とされる事で急激に数が減り、サイテスI類、IUCNレッドリストでは「絶滅寸前」のカテゴリに入れられているとても貴重なカメだ。写真のカメは、北米テキサス州に拠点を置き科学者とボランティアによって草の根的に運営されている「タートル・サバイバル・アライアンス(TSA)」のアジアチームによって先月、この漁村でひっそりと飼われていたことが発見されたのである。TSAはこうした場合、持ち主にお金を支払って、購入した個体を国内の保護施設へ移送する。施設には、こうして個人宅や食肉市場から時間をかけて、手作業で一匹一匹集められた十数匹のテラピンたちが育成されており、既に繁殖実績も上がっているという。

 アジア全域に見られるカメ食は、われわれ日本人の捕鯨文化と少し似ていて深く長い歴史があり、完全に途絶えるまでには時間を要するだろうし、その間、今すでに減少傾向の多くの亀種は絶滅に追い込まれていくだろうと思われる。ただ、こうして好んで消費することと同時に、カメが大好きで大好きでたまらないのもまた我々アジア人であると思う。それは中国人の異様ともいえるカメへの情熱を見ていても思うし、そもそも人間は、ちょっとでも気味が悪い、汚らわしいと思っているものは捕まえて食べようなどとも思わないはずだ。水と田んぼを愛し、自然のおこぼれをもらいながら生きてきたという意識のあるアジア人にとってカメは本当に親しみを感じる存在であるし、これから徐々にでも「愛すべき生き物、ときどき食べ物」から「守るべき隣人」への意識の転換が起こってくればいいなと思う。

2014年10月5日日曜日

ガサガサ活動その弐。

第一村人発見

 うちから車でちょっといった所にある雑木林の保護林(「春のキタミズベヘビ祭り」のあの林)へ行ってきた。気温10℃前後、湿度70パーセントの非常に動きやすい日で、セアカサラマンダーがそこかしこから出てきて楽しかった。反面、紅葉が始まり、冬に向けて枯れていくシダ類等を見ると「本当に夏は終わったんだな」と若干寂しくもなった。今夏は特に旅行などもほとんど行かず個人の雑務や健康面でのメンテナンスをやっているうちに終わった感じがするのも一因かもしれない。


 比較的大型のリードバック(無班)のメス個体。写真のバックに木が写っているが、こんな風にキノコの生えた倒木の下からは、サラマンダーは見つからない事が多い気がする。あと、朽木の下が粘土っぽく、ミミズが居るような環境になっている所でもあまり見かけない。彼らの隠れ家はただ木や石で覆われていればいいというだけでなく、多分、彼らにしかわからない色んな細かい好みのようなものがあるのだろう。こんな申し訳程度の脚で歩き回り「これだ」とピンとくる家を探すのはきっと一苦労に違いない。多分、そのためもあってか(サラマンダーやサンショウウオ全般に言える傾向かもしれないが)セアカサラマンダーはけっこう縄張り意識が強い。一度気に入った棲み家を見つけると、そこを一生懸命守ろうとして、ひとたび他の個体が侵入してきそうになればイソイソと出て行って噛みついたり(!)して、意外と強気にやっつけようとするから驚く。


 ・・・かと思えばこうして複数匹でやんわり同居?している感じのグループに出会う事もあるので謎である。

 写真の現場では4匹(1匹は既に緊急脱出している)がなんとな~く仲良く住んでいた。こんなに近くても均等に空間を開けているらしき所を見ると、多分この位がセアカサラマンダーにとって、見知らぬ個体同士が快適でいられるミニマムのパーソナルスペースなんだろか。真ん中に居るのは赤い色素が少ないか、無い個体。100匹に数匹まじっているくらいの比較的珍しい型。

 今まで見た記憶を統合すると、セアカサラマンダーは恐らくベースの銀灰色というか、パールカラーっぽいピグメントの他に赤と黄の色素を持っていて、3つの色素全てが存在すると、一枚目の写真のようないわゆる「ふつーの個体」になる。何らかの理由でこの色素を3つとも欠くと二枚目の写真のようなリードバックになる。赤い色素だけ抑制されると、三枚目のような黄色いラインの個体になる。赤い色素も黄色い色素もどちらも持たない場合、地のパールカラーのラインのみをもつ個体になる(いわゆるアネリスリスティック)。これはかなり珍しくて、写真でしか見た事はない。このほか、殆ど全身がオレンジ色になった個体も知られているが、これはもう本当に珍しくて、見つけることはちょっとした夢である。

2014年10月1日水曜日

秋のガサガサ活動開始

スポットサラマンダー Ambystoma maculatum

 ルー大柴さんの言うところの「ガサガサ」に適した季節がまたやってきた。今日は動物園の人にさそわれて、地元のネイチャーセンターで生き物とりをした。本来の狙いはカエルをいっぱい獲って、ツボカビとラナウイルスの分布を調べるためのサンプルをいっぱい採取する事だったが、前日が雨天だったため観察予定地の池が増水してカエル達が自由自在モードに入っており、厳しい戦いを強いられた。アフリカから帰ったばかりの飼育員L(←ウォリアータイプの女性②。本人は負傷していて参戦できない)に「そこ!右だ!!」「目、見えてんのか」「もっとアグレッシブに行け!!」とか喝を入れられながら、皆ガサガサどころか腰まで水に浸かって奮闘したものの、成果はいま一つだった。

 一方陸・半水棲種のサラマンダーはなかなか豊作で、このあたりでは比較的珍しいナガレサラマンダーの仲間のフタスジサラマンダーや、明るい黄色のポチポチが非常に可愛いスポットサラマンダーなど数匹を見つけることが出来た。スポットサラマンダーはトラフサンショウウオ科で、日本でもペットとして流通するタイガーサラマンダーやウーパールーパーのイトコの様な感じのイモリ。来るべき冬に備えて夏中食べまくってきたのか、見ているこっちが「よかったね」と幸せになるほどまるまるとしていた。因みにこの写真を撮った時ちょうど西日が差していたのだが、サンショウウオの皮膚は構造的にこうして直射日光を浴びることがダメージになる事があるそうなので、注意したいものだ。

フタスジサラマンダー Eurycea bislineata  これでも「巨大個体」

 因みにこの「ガサガサ」という用語、アメリカのフィールド好きの間では「shrubbing」という、感覚的にほぼ一致したスラングが当てられている(Shrub=藪)。そして、本当にどうでもいいトリビアだけれど、イギリス英語で「shrubber」といえば売春婦のヒモ男を差すスラングとなるのだ(なぜそうなるのかは各自ご想像下さい)。ともあれ、今後イギリス方面の人とフィールドでトゥギャザーする時は、うっかりかっこつけて「私とシュラビングしないか?」とか言わないよう、十分に注意したいところだ。

2014年9月26日金曜日

ミミナシ・サイドストーリー

借りてこられたオモチャ代表

 ミミナシオオトカゲの国際的なペットトレード数が過去2年間で急激に上昇している事が環境系ニュースで紹介されていた。70億年の歴史を今に留める、ボルネオ産のこのユニークなトカゲは日本にも輸入されて大いにメディアの注目を集めたものだが、記事によればこれと時を同じくして海外のペット愛好家のコミュニティ等でも関心を集める事となり、次いで非合法なものも含めた商業活動がはじまったということらしい(TRAFFIC調べ)。この組織の主張によると、過去2年間でこのトカゲの違法な採集と商業活動が日本、フランス、ドイツ、ウクライナ、チェコで確認されたとされ、今年の春にも違法なトラフィッキングルートに乗せられようとしていた40個体が押収されたという。この数だけでも1930年代以来から80年間で、学術的な動機で採集された全個体数のおよそ3倍にあたるという。

 個人的な考えだけれど、ミミナシオオトカゲって、ひょっとしたら野生下では「村人しか行かないような森の奥」みたいなところへ行けば、局所的にワラワラと存在しているタイプの生き物なのかもしれない。ただ、仮にそういう事実があったとしても、先週のGoPro株でもあるまいし特定の野生の生物が市場で急速にトレンド化するのは良くない事で、そうさせてしまう側のホビイスト達のモラルが問われる。このトカゲに関して言えば、ボルネオの自然は過去100年間ずっと減少傾向なこともあり、おそらくどんな類の搾取にも耐えられないであろう事が第一の不安材料だ。またこれだけ希少な動物なので、ふつうは学術関係組織~保護団体~なんやかや~というのが真っ先にやってきて「理性と良識」として機能する所が、ミミナシオオトカゲの場合商業者達の瞬発力がなんとなくそれを凌駕している点も良くない。

 それにしても残念な事だが、生態系の頂点に君臨している人間様と付き合ってゆくためには、いきもの達には今のところ殺されるか・搾取されるか・オモチャになるかしか選択肢がないらしい。この世の生き物達は、そんな猟奇エロ小説のようなシチュエーションに追いやられつつあるのだ。

2014年9月20日土曜日

最近のすあま

対比 4月→9月

 今年の4月に拾ったヤモリの子供について。コオロギSサイズを食べられるようになったあたりからセットした水槽に放り込んで、基本的な水替え・餌やりをする以外は見もしないという、放置プレイをしながら今に至っていますが、今日たまたま日中動いている所を発見した所トリコの小松並の変化を遂げていた(主観100%)。殆ど放任されて生きてきたためこの小さなセットの中で野生を身に付けたらしく、目の動きも鋭く行動も俊敏になって、以前のヤワヤワでフニフニだった仔ヤモリの面影はもうない。ただ、夜中にほんのりとしたすあま色になっている所は変わりなく、かわいさ度は保守の方向らしい。

 トルコナキヤモリ(ターキッシュゲッコ―、メディテラニアンゲッコー)は殆どペットとしての需要はない種かもしれないけれど、一応これまでの飼育環境をメモしておく。水槽は45センチのアクリル製で、これで十分終生飼育できると思う。温度勾配は、今計ってみたら24.4℃~32.7℃となっていた(過去5ヶ月何も環境を変えてないのでこれでずっと安定していたはず)。雰囲気的に、低温には案外弱そうなので22℃は切らないくらいにした方が良いと思われる。餌はヨーロッパイエコオロギのS~Mサイズを週に5匹やっている。代謝がいいらしく結構よく食べるが、成長期だからかもしれない。水は容器の他に一日1回霧吹きで壁を湿らせて与えている。

2014年9月15日月曜日

やつは恐竜の子孫だ 間違いない

ズオオオオ

 9月に入りちょっと暑さが和らいで来ました。となると皆自然と家の外へ出たくなるようで、たまにバイトしている近所のペットサプライ店がけっこう忙しい。そんな状況を察してか、ある日お店に行ってみると大きなオウムが応援に駆け付けてくれていました。管理人は毛のない生き物だけでなく鳥も大好きなのですが、彼らはよーく見ると端々に「爬虫類出身者」をにおわせる特徴があり(足とか)、親しみを覚えるのも理由の一つかも知れません。写真のオウムはココちゃんといい、大きなタイハクのメスです。白色の例にもれず雄叫びがすごいので捨てられた所をレスキューされた鳥だとか。右にちょろっと写ってるお姉さんが流血してように見えますが、これは彼女がココちゃんの爪を若干切りすぎてしまい、出た血を拭いたためで、ココちゃんがあの恐ろしい灰色の鈍器(嘴)でブツッとやったというわけではありませんので、ご安心ください。まあ、このお姉さん自体も半分白人半分アメリカインディアンの血を引き、180センチに届こうかというウォリアーなので全く心配には及ばないでしょう。彼女が片手で軽々散歩しているマスチフ2頭は両方70キロを越えています。アメリカにはこんな猛者がウヨウヨしているのです。うっかり魔界にきてしまったようだ。
 

2014年9月10日水曜日

 昨日の夕方、玄関からピンポンと音がしたので行ってみると「フリフリピンクさん(元軍人)」とは反対側の、左隣の通称「BRISC夫婦・嫁」の方が息せき切って立っていた。地下室の荷物をどけたら黒っぽい小さなヘビが出たから、捕まえてやっつけてほしいという。彼女は自宅で小さな幼児保育を営んでいて、ヘビが子供に害を及ぼさないかすごく心配していたので、一緒にその地下室を捜索(というか掃除)しながら、このあたりでその大きさ・色のヘビはだいたいクビワヘビか、ガーターヘビか、デケイヘビのどれかで、どれも毒はなくとてもおとなしいだけでなく、周辺環境にとって良い生き物なのだということを説明したら、納得してくれたようだった。結局、30分ほど地下室を探したけれど見つけられなかったので、また見たら呼んでくれと言い残して帰宅した。

 そんなことがあったので、児童教育に関わる人の意識を変える事ってとても効率的だなあと今日は思っていた。自分も時々地元の日本人学校で教えているので覚えがあるが、大人たちは『害虫』が出るや、「それが子供に害を及ぼさないかすごく心配」しすぎるあまり、「『害虫』を見ればなにがなんでも殺そうとする大人達をたびたび目にすることが子供に及ぼす害」について忘れてしまいがちかもしれないと思った(まあ、人類の敵・蚊くらいのレベルになればこの『害虫』にも説得力はあるかもしれないが・・・)。反面、先生がそういう生き物に対してのおもしろい知識とか、倫理的な対処法を身に付けていれば、例えば教室に蜂が飛び込んでくることの意味合いは180°変化して、子供達にとってはポジティブな勉強のチャンスになるだろう。

 因みにさきほど道で会った彼女から聞いたところによると今朝また同じ場所に居るヘビを見つけたので、出勤前のBRISC夫婦・旦那の方に頼んで捕ってもらったという。怖かったけど箱に入れて子供に見せたあと、一緒に外に逃がしたそうだ。

2014年9月9日火曜日

ボールの呼吸器疾患解明へ一歩


 ふだん熱帯産のヘビに親しんでいる人ならば、今までに呼吸器疾患に陥っている個体に遭遇した経験がある人も多いかもしれません。我が家でも、以前購入してふた月ほどしか経っていないWC(?)アダルトのレインボーボアを、原因不明のひどい肺炎様の症状で落としてしまうという苦い経験をしたことがあります。呼吸器の病気は急速に進行したり、また比較的悪化するまで症状が見えにくい場合もあったりで、ブリーディング施設や専門店、個人のコレクターにとっては非常に怖い存在といえるでしょう。

 今週サイエンスジャーナルに発表された記事によると、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者チームが呼吸器疾患で死んだボールパイソンの呼吸器の組織から、病理学上非常に重要と思しきウイルスの同定に成功したと書かれていました。発見されたのはこれまで発見されてきたどのRNAウイルスよりも大型の、新種のニドウイルスの仲間とのこと。90年代以降、キャプティブ下のボールパイソンの間に見られる致死的呼吸器疾患の原因についてさまざまな研究や推測が成されてきましたが、従来の判別技術では決定的な因子の同定にまでは至っていませんでした。今回ウイルスが同定されたことによって、この長い間不明瞭だった疾患の全貌解明と、獣医薬学上の新たな一歩が踏み出されたことになります。同研究者チームは今後引き続きこのウイルスが生体内で実際にどのような動きをし、何が決定打となって病気が引き起こされるのかを調査していく方針とのことです。

(写真上)先日ぶらついた即売会で、ゴーストシルバーストリークの女の子がポ~っとしているのを見かけた。
(写真下)同じ即売会で目撃したレッサーブラックパステル、ブラックパステルピンストライプ。とてもかわいい。
     値段はとてもかわいくない。

2014年9月5日金曜日

「古き良きハープカルチャー」時代の終わり


 先日のメモでちょっと触れた、北米での危険動物条例(Dangerous Wild Animal Act)の改正の動きについて。この問題は2年前にも書いた事がありますが、最近、この「危険動物」のカテゴリの中にわれらがボアコンやアミメを含めようという風潮になってきているのが、ここのところホビイストの間で話題になっています。日本で既に経験したこのナンセンスに再び遭遇することになろうとは。法律の内容自体は別としても、こうして一歩一歩歩幅は小さくともここ5年くらいで当地の動物関連の法律が着実に改定を重ねている点も不穏な感じがします。極論かもしれないけれど、こうやっていつしか大型爬虫類自体一般家庭では飼えなくなるのではないかと、いち愛好家としては本能的に危機感を感じるものであります(実際今年の3月にはお隣のウエストバージニア州で、コンストリクター類ふくむ「危険動物」の飼育自体が全面規制になるというあまり他人事ではない出来事もあったばかり)。管理人は、いわゆる「危険動物」の飼育に関してライセンス制とかペット税の導入などには肯定的、というかむしろ、イヌネコ含む全てのペットに課税しろとすら思っているんですが、それと同時に、絶滅危惧種でもないかぎり自分の責任下で好きな生き物を飼う事は根本的・普遍的個人の自由のひとつだとも考えているので、「家庭での飼育も禁止」となったら人権にかかわることだと思う。

 これは日本に住んでる爬虫類ファンにも、100パーセント関係ないとは言い切れない話題ではないかと思う。アメリカは年に約11億3000万匹もの爬虫類を世界に供給する(2009年)世界一の爬虫類輸出国であり、このシュミにとっては心臓とかエンジンに匹敵する場所。爬虫類産業の場合、これらの数字の多くはブリーダーやプロショップなどの、ビジネス的にはいわゆる「中小企業」と言えるユニットによって支えられているので、一つ一つの法律や法例がそれらに与える影響についても気を付けなければいけないと思う。そして、多くのブリーダーにとって爬虫類は「仕事」として以前に、趣味としての根源的な情熱がないと成り立たない側面もあるのではないかと思う。たとえば自分が爬虫類のファームを持っていたとして、ペットショップ等に卸すためのメジャー種を「仕事」として増やす傍ら、アフターファイブは自分が本当に好きなアミメニシキヘビのブリーディングに力を入れていたとする。ところがある日を境に「今日からあなたはフトアゴとコーンスネークとベルツノとチョウセンスズガエルしか飼育・繁殖しちゃだめになりました」と言われたら、かなりやる気を失う気がする。実際のところ、日本で言われる「マニア垂涎」的な動物たちは、アメリカの商業ブリーダー達によって、本業とは別の情熱でもって細々と殖やされていることも多いのである(ユーロ産の個体であっても元親のストックはアメリカから来ていたりすることもある)。とにかく、シュミの世界においてこの国に経済的な元気さと人々の適度な自由さがあることはクリティカルである。

 ・・・とか言ってたら昨日テレビでカリフォルニアでペットのリューシスティックコブラが逃げちゃったよというニュースを見た。こうしてハープカルチャーは、熱心なハープファン達自身によって(よくもわるくも)転換していく気がしないでもない。最近いろいろなメディアを見ていると、全体的にこの国では「古き良きハープカルチャー」の時代は90年代後期くらいを境に終わった傾向があるように思う。

2014年9月3日水曜日

北欧雑貨だと言い張る

Anisota senatoria

 無垢材を背景にすればなんでも北欧雑貨に見えてくる世の中。これは、ほしい。イモメッコのソックスクリップ。アウトドアで魅せよう、「余分をたのしむ」靴下のアクセント。#ていねいなくらし

 今書いていてブルッときたのでやめますが、ここのところ効率よく「夏」を謳歌するにはどうすべきかを懸案した末、比較的短い拘束時間でも満喫できる気がした「炭火焼グリル」を裏庭に設置しました。しかし、通り道にしている両生類のために殺虫剤等を極力使用しない方針でやってきた庭なので、いつのまにやら虫天国状態。ちょっとアー写気味に撮ってみた(当社比)写真のオークワームも知らぬ間に靴下の上にジーッと佇んでいたので危うく踏む所だった。管理人は過去にも丸々太った終齢の野蚕系イモムシを素足で踏むという大参事に見舞われた事があるため、この手のうっかりミスだけはどうしても回避したいところであります。


 そして現在の裏庭の様子。グリルの箱には700F度(370℃)までのメモリが付いているけど、家庭の調理でそんなに温度が必要なものはあまり思い浮かばない(ピザも食べないし・・・)。しかし、火で遊んだり、何かを焼いてみたりするのが本能的に好きな自分のような者にとっては、「本気出せばちょっと高温になるアイテム」というだけで、若干胸が高鳴るものがあることも確かである。

 ところで、炭火焼器の後ろに写っているのが以前大雨で流されたオタマジャクシを助けるのに役立った例のミニ緑地です。暑さと忙しさにかまけてここの改造計画は頓挫してしまい、かわりにコンポスト兼、採集してきた地元産シダ類を植えるスペースと化してしまったのでした。残念な一方、餌も水場もシェルターもあるせいか定期的に住み着くカエルが現れるようになったので、今のところはそれを見て喜んでいる。

2014年8月28日木曜日

部屋が汚い男に注意


 気付けば去年から一度も話題にのぼっていなかったサングローハイポのレルモントフ。とにかくよく動く奴で、全然まともな写真が撮れなかったのもその一因でした。レルモントフのフォルダを開けると↑のようなのばかりザクザク出てくる。このヘビは管理人がケージの戸を開けると、餌を食べている時以外は何をしていても一時中断して、人間側にズイズイと寄って来るというわけの分からない癖があります(時には霧吹きの水を飲みながら。お前はラットスネークか)。そしてズズイと接近し終わると、今度はおもむろに舌をチョロチョロして管理人の顔面を査定してきます。どうも、たまに覗きに来るこの「自分以外の生き物」に対して強い興味を持っているようです。毎回繰り返されるこの儀式?によってそのうち「モン太郎じるし」でももらえれば、人生、何か良い事でもあるだろうか。

朝お決まりの光景。床はグジャグジャ、ヘビはキョロキョロ、ミズゴケタッパーの蓋はもちろんどっかへすっ飛んでいる。

 レルモントフはまた、うちのヘビたちの中で最も部屋の使い方が汚い奴でもあります。軽くて細かい床材だと全てをモリモリにしてしまうので、ヤシガラか、ケイティの大粒紙サンド・グレーというのを使っていますが、それでも問題を全解決するには至っていません。糞も、他の二頭のロンギコウダはひっそりとケージの片隅に盛り上げるフェレット系であるのに対し、このヘビはケージの広範囲に惜しげもなく・ふんだんにばら撒くカバタイプです。「恥ずい」という概念は、彼の辞書にはなかった。


 この好奇心の強さ、この衛生感、どこか「本能の欠如」を感じずにはおれない個体。サイズもナミヘビ並に小さく、野生だったら絶対に生き残って行けないタイプかと思われます。まあ、これだけ改良のすすんだヘビがいるというのも、ボアコンのおもしろみの一つかもしれません。そういえば最近、北米ではまたボアコン飼育に関する法の見直しの動きが加速してきてるんですよ。アメリカでボアコンがダメになったら、この趣味もまた一段と味気ないものになりそうですね。現在は特に世界的に環境保護の気運が高まっているので、爬虫類業界はこれからも厳しい戦いを強いられていくことになりそうです。