2014年11月1日土曜日

イモリツボカビの新たな脅威


とある日のイモリ・ラボにて 管理人に気づいて手をふっている?ブチイモリ

 有尾類キーパーの方にぜひ知ってほしい話を読んだ(日本語のニュース記事はこちら。より詳しい説明は国立環境研究所のこのページでも見られる)。アジア産有尾類の保有するツボカビの一種が現在、欧州産のイモリ・サンショウウオの間で猛威を振るっており、今後さらに北米にまで達する可能性が非常に高いという話だ。この菌はイモリツボカビ-Batrachochytrium salamandrivorans(Bs)といい、ベルギーの研究所での実験によると新旧大陸の多くの有尾類に対して感染力、致死率ともに非常に高く、特に欧州から地中海沿岸域に生息する種の多くや、管理人の住む北アメリカで代表的な種であるブチイモリなどがこの菌に感染した場合、致死率はほぼ100パーセントに達するという。

 専門家によると、このアウトブレイクの重要な要因に両生類のペットトレードが挙げられるという。イボイモリやシナイモリをはじめ、アジアの有尾類の中にはペットとして人気があり頻繁にペットルートにのる種があるが、これらの種の中にはBs菌に対して対抗性、耐性があったり、感受性を持つものが広く見られるいう(日本のアカハライモリもこの菌に対して感受性が確認された)。現在欧州で猛威を振るっているBs菌の発生源は、こうして人為的に持ち込まれた生き物達だという。管理人はちょうど先日オランダのファイアサラマンダー棲息数があっちゅう間に減少して今や絶滅の危機、という話を読んで心を痛めていたのだが、陰の立役者としてこのツボカビ菌がからんでいた部分も大いにあったのだろう。

 この事態、日本でアジア産の両生類を飼育している分にはほとんど影響がないとも思える事かもしれない。けれども、こうした「未知の外来病原菌」が今後も出てくる可能性もある。今回アジアの有尾類がBsに耐性を示したように、例えば外産種達はへっちゃらでも、日本のイモリ・サラマンダー達にとっては重症化する菌などが、これから絶対に出てこないとは言い切れない。またカエルツボカビ症におけるアメリカザリガニのように、一見全く無関係な種が要員となって、在来種たちに間接的に予期せぬダメージを与えるということも考えられる。有尾類に限らず外国産の生物をペットとして飼う場合、衛生管理のきちんとした専門店からCB個体を購入し、個体同士は触れさせない、飼育水はできれば消毒してから下水に流す(外に捨てない)、死んだ個体は焼却する、フィールドで使った靴や器具はきれいに洗ってそのつど殺菌する、等の「基本」を今一度思い出しながら挑みたい。また、飼育している複数のイモリ・サラマンダーが次々と死ぬなど不審な事が起きた場合は、最寄りの獣医大学の病理学研究所に連絡をとる事を勧める。一例としてカエルツボカビ症の時、我々愛好家にも相談窓口を提供してくださっていた麻布大学病理学研究所のリンクを貼っておく。

 今日はあまり時間なく急いで書いたためちょっとゴチャゴチャした文章になってしまったかもしれないけれど、愛好家間で共有する必要のある事かと思ったので、どうしてもメモしておきたかった。それもこれも先週、研究者の間でも現在入手が非常に困難だという「旧世界のイモリ・サンショウウオ」という新しい本をたまたま貸りられる機会があり、そこで欧州産有尾類の多くが、その生息状況が本当の本当に風前の灯状態だということを具体的に見せつけられ、ガーンときた事も大きいかもしれない。