2014年12月24日水曜日

「新種」の作り方


 爬虫類や両生類の新種といえば大自然の奥地で科学者や探検隊が発見するような印象がありますが、実はヒトの管理下からも生まれるんだという話を目にしました。リンク先は英文ですが、その新種のトカゲのブロマイドが掲載されています(可もなく・・・不可もなく・・・といった風なトカゲです)。この話の概要は、

 ・北米に住むハシリトカゲ(Aspidoscelis属のなかま)は、地域により亜種間交雑や単為生殖する事が知られていた
 ・亜種間交雑した個体は、それ以降単為生殖によってメスの子孫のみを生み出すことが分かっていた
 ・この時クローン体であるはずの仔個体は、親と違ったゲノム配列をもったトカゲになることがある
 ・さらに、米国南部の一地域には、遺伝的に三倍体のハシリトカゲが居る事が知られていた
 ・さらにさらに、1967年にNeaves氏により天然の四倍体の個体も発見されていた
 ・この不可思議な現象を実験室で再現しようという試みが行われる(単為生殖する三倍体メスと近縁種のオスを用いて)
 ・予想通り四倍体の仔がとれた。しかも単為生殖しはじめて、現在その子孫が200匹まで増えている
 ・これらの子孫は新種であるとして、「Aspidoscelis neavesi」と名付けられた

とのことです。ただこれを新種と言い切るには反対意見もあり、というよりかは「ハイブリッド・クローン」のような存在として、新定義を設ける必要があると考える人も居るようです。面白いのは、こういう亜種間交雑やその後のリプロダクションが、ふつうだったら何千世代もかかる新種形成の取りうる、別の道順として存在するという一例が示されたことで、「人工的な環境下での新種の発生」というセンセーショナルな出来事は、その確かめ算からの、副産物という位置づけなのだと思われます。とりあえず、そんな「新種」作りに興味のある人は、まずは野生下で亜種間交雑+単為生殖する生物を探してくる所から始めるとよさそうです(笑)。

 しかしこれを見ると学問には王道なしだが、「新種形成に王道あり」という事になって、系統学的ズルが横行しても良さそうなものですが。少なくとも自分がハシリトカゲだったら正直、チートしたくなると思います。なにしろニューメキシコかどこかの砂原をチョロチョロ走り回って、そのうち鳥かなんかにコツッとやられて死ぬか、人間に無暗に追い掛け回されたり、捕えられて「トカゲ sp」みたいな扱いになって、輸送中の箱の中で死ぬかみたいな人生だと思うので、それならば一か八かナウな子孫でも残して、ひと花咲かせようぜ!という気にもなってくると思います。


 そんなこんなで今年もクリスマスの季節になってしまいました。今年はこのブログの方もリンクしてくださる方が出てきたり・アクセス数も少し増えたり(といっても以前のアクセス数は1日5pvとかでしたが 爆)と、嬉しい変化がありました。反面、私生活では電化製品は壊れまくり思わぬ健康上の問題が浮上したり、喪中になったりと、あまりめでたい事もなかった大殺界・2014年だったので、新年の挨拶は出来ませんが、クリスマスのeカード用にちょちょっと作った絵を飾って、今年の更新を終了したいと思います(本当はあと1回まとめ記事を書きたかったですが、時間がとれるか分からないので)。それでは、みな様、一年間、こんな文字ばかりなブログを読みに来てくださりありがとうございました。良いホリデーシーズンをお過ごしください。

2014年12月20日土曜日

スナボアの近況


 ぷん太郎(♀)のケージにも雪が積もる季節になりました。

 というのは冗談で、チチュウカイヤモリのミニテラリウム用に購入した砂の余りを、スナボアにも入れてやった所の写真です。管理人がジャベリンスナボアだと信じているこのヘビ、WCならば、遠い昔こんな光景が本当にあったかもしれないと思うと、わくわくするような、少し切ないような、微妙な感覚に陥ります。ただCBという可能性もあるので、全ての想像は=妄想なのですが。

 ぷん太郎はもうすぐうちに来て3年目を迎えますが、環境に十分に馴染んだらしく最近何となくピカピカしてきました。そこでどこかにいいオスでもいたらいいなとたまに思うのですが、そもそもあまり流通量のないスナボア、加えてこの個体は種類もオリジンもあやふやなので、将来的にもし子供が出来てももらいてがないかもしれません。自分が販売者から聞いたぷん太郎にまつわる情報は、「おそらく」今までに2回下取りに出されていて、CB「かもしれない」「ロシアスナボア」のメスで南シベリア産「らしい」というものだけで、真相は本ヘビのみぞ知るという状況なのです。

 このヘビを見ていると、WCの両・爬のペットトレードの世界では、生体の出自やローカリティなどの正確な情報を提供する、信頼に足るようなシステムがなく、生き物を買う側にとっては結局の所供給者(輸入者やお店)による口伝えや、書面というアナログな手法で伝えられたデータしか、頼れるものがないことを残念に思います。そのような情報は時間とともに失われる可能性もあるし、またどんなに信頼できる会社やお店でも、手違いが起きる事もあるでしょう。そのため極論を言えば、現段階では、WCの生物は野外採集されてペットトレードに乗ったとたん正確な個体情報が失われる一方となり、たとえ生きもの自体としては元気に生きていたとしても、その種・亜種としては「死んだ」状態になっていきます。「死んだ」というのはその個体が将来的にその種・亜種のために貢献する可能性が、限りなくゼロに近くなったという意味です。

 しかし野生の生き物という天然資源が減少傾向にある事や、爬虫類や両生類が非常に長命な生き物だという事を鑑みると、愛好家個人個人が好きで細々と系統維持していた生き物が、我々の趣味を持続可能なものにしていくだけでなく、遠い将来種の保存などにおいて重要な役割を果たすようになる日が、絶対に来ないとは言い切れないのではないかと思うのです。突飛なアイデアに聞こえるかもしれないけれど、希少種のカメなどでは既に一般人のペットを保護団体が買い上げて、繁殖プログラムに取り入れるなどの動きは出てきています。(※ここから先は長い退屈なウンチクになるので、アップするか迷いましたが、日ごろWCの動物に関わりがあって、且つ時間のある人には面白いかもしれない話題だと思ったので、追記にしました。もっと読むのボタンから読めます)。

2014年12月16日火曜日

真夜中のゴキさんアカさん


 今年は12月21日が一年で一番日照時間が短い日だと伺いました。どうりで最近ランニング(という名の散歩)に出て公園などで道草していると、あれよあれよという間に真っ暗闇になるはずですね。そんな管理人地方ですが本日の気温は5℃弱くらいで比較的暖かく感じたので、何か生き物が見られるかもしれないと思い、真っ暗になった冬の雑木林を少し散策しました。ところが彼らの隠れ家をあたっていくうちに、出るわ出るわ森ゴキブリのオンパレードで。しかも成体ではなく、卵から孵ってひと月かそこらくらいの小さいサイズの虫がうじゃうじゃといました。時期的にもうこのまま越冬するのだと思いますが、これらの虫やナメクジ類が、冬の間乏しい資源でやりくりする他の生き物たちの助けになっているのかもしれません。

 そんな事を考えつつしばらく歩きましたが、他の生き物で見つかったのは写真のセアカサラマンダーだけ。先日に引き続きまたもや1匹しか見つけられませんでした。このサラマンダーは時と場所によっては「君たちもういいよ」位出てくることもありますが、同じ場所で似たような気温の時でも全く見られない事もあり、このエンカウント率の変動のふしぎを解き明かすには、まだまだ時間がかかりそうです。ただハッキリと感じるのは、こんなふうに殆ど物陰から出てこない彼らでも、空気中の湿度や気温、日照時間(≒天候、季節)などはかなり敏感に感じ取っているらしいということです。

 1匹だけ出てきてくれたセアカの尻尾は、先っちょに切れた跡がありました。この種類にどのくらいの再生能力があるのかは分かりませんが、ぽつんと出来た再生尾の部分もぷりぷりと瑞々しく、なかなかいいスタートを切っているように見えた。もっと近くでまじまじと見たかったですが、怖がって目に涙を溜めていた(ように見えた)ので気の毒になりリリース。放してやる時に気付いたんですが、セアカって暗い所で目が光ります。写真にも若干写っているかな。両生類にとってこういう細かい体の事は、一見質素で地味だけれど、360億年かけて熟考されたデザインだと思うとなかなか感慨深いものがあります。

2014年12月14日日曜日

家庭で「森」は作れるか

密生した森の一番外側、バナナの葉っぱで休んでいたヒルヤモリ。 因みに移入種。 2011年 ハワイ、オアフ島

 結論から言うと、作れるらしい。ちょっと前にエンジニアリング系の番組で聞いた話。

 この話題の発起人は、日本のトヨタ自動車で働くインド人のシャルマさんという、工業エンジニアである。彼は日本で働いている間に、日本各地にある鎮守の森などを着想源として、背の高い木と、中ぐらいの木と、低木とがテトリスのように上手く組み合わさった「コンパクトだけど非常に濃密な森」を、植樹によって再現できることを知った。専門家の下で植樹のボランティア活動をするうちに植樹にのめりこんだ彼は、インドの市街地にある実家の裏に土着の草木の苗木を用いて、「インド版鎮守の森」の育成に成功する。そこで彼はこの、人間による注意深い設計と、手助けを受けた手作りの「森」が、自然のままの状態の森林とくらべて10倍の速度で育ち、30倍の植生密度を持ち、結果として100倍もの生物多様性を保有している事を知った。

 そこで、車のエンジニアである彼は「トヨタが車をライン生産するのと同じようなコンセプトで、森も作れるのではないか」と考えた。というのもトヨタでは、良い品質の車を効率よく作るために「平準化」といって、異なる車種でも単一のライン上で素早く量産できるような仕組みを導入しているそうだ。転じて、自然の森林を領域ごとによく分析して、異なる種類の土着の草木を効率的に配置したモデルを作り、量産し、それを何層も重ねて行くことで、いかなる場所でも簡単に「小さな森」を出現させることが出来るという。エンジニアリングによって空間の無駄を極限まで削られたこの森は、成長すると空間の活用率が100%近くに達するので、人が歩いて分け入ることは不可能だそうだ。これを聞いて思い出したのは、2年くらい前にハワイのハワイ本島へ行った時の事だ。火山島でスペースが限られているためか、島の原生林は自然とかなり密生していて、横から見るとジャングルがキューブというか、壁のようになっている所もあり、その密度にびっくりした。そんな有様なので人間や家畜は立ち入れないが、太く絡まり合う樹木やツタ、気根の間をミツスイなどの小さな鳥類が自由自在に飛び回り、恐らく昆虫や両生類などの小さな生き物もどっさりいるであろう気配があった。

 シャルマさんは現在、小さな「森」をエンジニアリングする会社を興して、個人住宅や学校、企業や工場などの死んだスペースを緑化する仕事をしているという。またこのテーマに関して自らが働きかけるのだけではなく、世界各地の人々が自分で「森」を手作りしたい時に、遠隔地からでも地質調査を出来るように手配をするシステムを作ったり、ボタン一つでどのような草木や樹木をどのような配合で植えて行けばいいかが分かる、オープンソースのオンラインプラットフォームの開発にも着手しているそうだ。トヨタ式平準化の結果、ひとつの「森」を作る時のコストも最小でiPhone一個分くらいまで下げられるようになってきているという。個人的に、これほどぎゅうづめて木を植えると、100年後、1000年後はどうなってしまうのだろうと少し心配になるが、「自然をデザインし量産する」という発想を得て、あるていど形になるところまで来ているのだけでも素晴らしいと思う。因みにもうピンと来ている人も居るかもしれないが、彼が強くインスパイアされた日本人の植樹の専門家というのは、生態学者で植樹の達人、宮脇 昭氏である。

2014年12月13日土曜日

電球、今年の繁殖成績

 前回のウールマットの話に関して、コメントやグーグルの+、ブログむらのクリックなど、さまざまな反響をいただけ、大変ありがたく思いました。とても励みになりました。ひとつだけ補足したいことがあります。該当記事のコメントでも少し触れていますが、ウールマットはものによっては繊維が強いと感じるものがあるので、両生類の幼体や、サラマンダーでもあまり小型のもの、地面に潜っていくタイプの種類に使う時は注意が必要かもしれないと思いました。もちろん皆さんそれぞれのやり方があると思うので、おせっかいかなとは思いましたが、事故があってからではいけないので。このような生き物の場合は、代替案としては薄切りスポンジや業務用ペーパータオル(できれば漂泊してないもの)などをよく水にさらしてから使えば、手軽ですし、見た目はあまり良くないですが頻繁に取り換えられるので便利です。


 そんなこんなで今年もあと十数日を残す程度となってしまいました。日ごろかなり怠慢な管理人ですが、今年は思う所があり、作業部屋兼・爬虫類部屋の大掃除ならびに模様替えを開始しました。まずは積みあがった道具類・有象無象の整理からはじめ、昨日書籍の大箱と、工具類の大箱を運び終えたので、今日は空いたスペースに爬虫類関係の気狂い器具類を整理整頓するため、手始めに部屋の各所で跳梁跋扈していた電球たちをひとところに集結させました。

これをアップしたあと 新品のソケットと電球もうふたつ出てきました。

 で、出てきた電球の数を見て愕然としたんですが、こんなに買ってきた覚えないんですね。うちには現在、保温が必要な動物はヘビ4頭、極小ヤモリ1匹の計5匹しかいない上、そのうち2匹は同じランプをシェアしているので、予備の電球は最大8こあれば事足ります。しかし、今日こうして出てきた電球の数を数えてみたら、20個ちかくありました。どう考えても電球が自然繁殖してるとしか考えられません。しかもこれみんな新品なんですね。ズーメッドで沢山買い物するともらえる「ありがとうシール」みたいなのまで出てきたし・・・・・・。

 なぜこんな風になってしまったかと言えば、理由はうすうす分かってるんですが、管理人、趣味にまつわる道具類で何か新しいものが出ると脊髄反射的に買う癖があります。中でも得意なのは電球です(カラスか)。しかも買ってすぐに強力な痴呆を発揮して、買ったことを忘れてしまいます。当然、どこに収納したかまで忘れてしまうので、消しゴムよろしく、いつも必要な時に限って必ず出てこず、新しいものをまた買いに行く→忘れる→なくす→買う、この無限サイクルとなってしまいます。あなや。

 さらに、特定の物品の、特定の型が気に入ると、全く同じものでもいくつも買ってしまう癖も、この問題を根深くします。今回はそれで電球のほかに全く同じ防塵マスクが4つと、全く同じ色・型番の大型プラケも数個出てきました。誰も使ってないのに流木がゴロゴロ出てくるのもおかしいな。誤解を招かないように書くと、本人に物欲は殆どありませんしいわゆる収集癖もないので、やはりこの強力な痴呆が問題の核心かと思われます。

 一方たまに掃除すると、面白いものが出てきて楽しいこともあります。今回、爬虫類にまつわるものでは、ウィバリウムガイドの1号(←写真左)が出てきましたよ。本家のビバリウムガイドは布教用に実家に残してきたにもかかわらず、なぜかこれだけが海を越えてやってきたと思うと、可笑しいですね。たぶん全米くまなく探しても、ウィバリウムガイドを持っているのは自分だけでしょう、感動で胸が「じ~ん」と熱くなります。物品の「レアさ」とは、こんなにも相対的なものなのかと。

 ウィバガの下に畳んであるのは、引っ越す時に友人がくれた「野毛山動物園のカメ手ぬぐい」です。絵柄が可愛らしいのでずっと壁にかけてあった(飾ってるつもり)のですが、これを期に、グッズ置き場としてどこか所定の場所を作れればと思います。この手ぬぐいもきっとアメリカ中探しても、なかなか見つからないでしょう(じ~ん)。では、無駄話はこのくらいにして、また掃除に戻りたいと思います。

2014年12月11日木曜日

もう、ミズゴケには頼らない(年金にも)


 このブログでもリンクしていただいている、「自然と遊ぶ」のSigeさんが、日本のヒキガエルの冬眠床 を作る時床材の一部に水槽の濾過機用マット材を使っているのを拝見したのがきっかけで、これはボアコン用のウェットシェルターにも転用できるかもしれないと思い、やってみました。材料は・・・・・・、ともったいぶるのもばからしいくらい単純なアイデアなので、よかったら上の写真を見てください。濾過機に挿入するウールマットを定型に切り、きれいな水をひたひたに入れて使うだけです。本当は汚れが見やすいように白色のマットが良かったのですが、近所のサプライショップには青いのしか売っていなかったので、それを使っています。ボアコンはある程度厚みのある材の方を好むと思うので、薄いマットしか手に入らなかった時は最低でも3センチ分位になるように重ねると良いと思います。(※安全上の補足事項があります)。


 人間に対しては一番よそよそしいウダ美ですが・・・こういう新しい仕掛けを作ると真っ先にやってきて使ってくれるのが、彼女の良い所であります(脱皮前なせいか?)。このブログを書いている時点で設置から1週間ほど経過を見ているのですが、うちにいるボアコン3頭とも普通に活用してくれているようです。水分もしっかり蒸発してるらしく、ケージに手を入れるとほっこりとしています。

 ウェットシェルターの敷材については、管理人の場合、今までいろいろな紆余曲折がありました。理想を言えば100%ミズゴケが良いのですが、大きなヘビだと一度に沢山使うし、再利用できないので、しょっちゅう変えてやろうと思うととても高くつきます。ミズゴケはまた、自然な色合いが良い感じな一方、知らない間に不衛生になっていても分かりにくいのも気になっていました。それで代わりとなる様な素材として布(タオル地)やスポンジ、小さく切った人工芝、玉砂利、くしゃくしゃにしたペーパータオルなどなど順番に色々試していたのですが、保水力に難があったり、水分がほどよく蒸散してくれなかったり、ヘビが嫌がって入らなかったり・・・重かったり掃除が面倒だったり・・・と、なかなかうまい事ぴったりくる材が見つかっていなかったので、今回のウールマットはかなりイケている!と自画自賛しているわけなのですね。洗濯ネットに入れて洗えるし。

 我が家では今年の頭に大きいロンギが少し体調を崩したこともあり(実は今でも若干の健康不安が残っている)、湿度対策だけでなく、水分補給のやりかた全体的にけっこう頭を悩ましてきました。なにより、獣医師のアドバイスを聞いたり、また自分でもこの一年頻繁に南米産の生き物と接し、多くの時間を彼らのいる環境の中で過ごしてみて、ボア類をはじめ熱帯のヘビ達の好む水の摂り方が少しづつ掴めてきていたので、それと比較して自分が自宅で用意してやれる環境では理想とは程遠く、結構フラストレーションがたまっていました。まず、自然に近い環境の中にいるこれらのヘビ達は、喉が本当にカラカラで他に選択肢がない時を除いて、基本的に水入れの水はほとんど飲まないことに気付きました。そのかわり、水遣りの時一時的にできる細い流れのようにチョロチョロしている水を好んだり、雨の様にサーっと体に水分が滴っている状態、しかもそれが一定時間続くと、おもむろにその水を飲みだしたりします。でもそれは、彼らの感覚で考えると当然の事なんですね。自分がもしもヘビでジャングルに暮らしていたなら、手近な場所で比較的安全に手に入る最も新鮮な水のソースは、例えば隠れ家の壁をつたってくる雨水などだと思います。だから、そういうのに似た状況で水分補給をしようとするのは、全く自然なことと言えます。でもそうすると、ボアコンだってイグアナやカメレオンみたいにケージにミスターや、ドリッパーがあった方がいいのだろうかとか、色々考えてしまうわけです。ちょっと話がウェットシェルターから逸れすぎましたが、こういう細かい工夫の積み重ねによって、ペットたちの生活環境が多少マシになっていく可能性があるので、たまに考えてみる価値はあるような気がします。

2014年12月7日日曜日

オオカミウオ試食


 突然ですが、最近オオカミウオを食べた話を。

 外国で生活していると、日本では当然のように行っていた生活上の習慣をあきらめないといけない事があります。たとえば「首まで風呂に浸かる事」。管理人はヨーロッパに住んでた時も含めてもう4年ほど風呂に浸かっていないのですが、特に今くらいの季節になってくると不便さが身に沁みます。家にはバスタブがあるものの、日本と違ってこちらでは体を洗う場所=バスタブの中がスタンダードなため、肝心のバスルームの床に排水口が配備されておらず、なかなか気軽な気持ちでは入れないんですね。それで、このままだと循環が悪くなるのではないかと心配になり、ホット・バスやジャクジーがあるスポーツジムにも入ってみましたが、そういう所ではあまり「日本の風呂」的雰囲気は味わえません。

 もうひとつきっぱり諦めた事に「うまい魚介類を食べる事」があります。管理人は幼少時、母親の郷里の山口県で毎年ぴちぴちのおいしい海産物をたくさん食べさせてもらっていたので、魚や海藻の味は少し気になる方です。一方、米国では食品衛生法によって生魚はいったん必ず冷凍しなければダメなのに加え、その冷凍設備が日本のと比べてどうも劣っているらしく、解凍後店で売られる頃には味も食感も変わり果てた状態になる魚が多いです(だから調理法もフライが多い)。鮮魚の冷凍・冷蔵はきちんと行えばより魚の味を良くするとも言われていますが、元来魚を生食する文化のなかった所なので、冷凍食品売り場に常に養殖ティラピアがあるだけでもラッキーなのかもしれません。

キノコ 乗せすぎか・・・。上の黄色いのはレモンの皮のすりおろし。これも乗せすぎ、

 反面、地理的に大きく離れた所に住むということは、今まであまりなじみのなかった食材・具材と出会えるということでもありますから、いい事もあります。このオオカミウオなどはその一例でしょう。日本でもたまに手に入るらしいですが、上野の吉池でしょっちゅう張り込んでた自分からすると、エンカウント率は非常に低いと言えましょう。今は、どうなのかな。とにかく陸揚げされると不細工さが目立つ魚なので、きっとこれからもメジャーな食材になることはないでしょう。

 肝心の味の方ですが、取り立てて何も言う事のない、ふつ~~~の白身魚でした。焼いたら妙に小さくなったのと、微妙にワキシーなテクスチャのため、深海魚だなという事は分かりましたが、それ以上でも、それ以下でもない。ただ、このワキシーさはアブラソコムツやバラムツなどに通じるものを感じたので、これらの魚でお腹をこわす人は注意した方が良いかもしれません。まあ、オオカミウオを一本買いして、一人でまるまる食すなどでなければ大丈夫でしょう。そもそもそんな人いないか。というわけで今回もいよいよ尻すぼみになって参りましたが、日本に帰省したら下関唐戸市場横のお寿司やで「ずり」握りをおなかいっぱい食するぞと、いやに具体的な決意を新たにしたところで、エアー筆を置きたいと思います。

2014年12月5日金曜日

誰にでも逆鱗はある


 ハイポボアのレルモントフが脱皮して、ぺちゃんこにのされた脱皮殻がケージの床にくっついてしまった(なぜ?)ので、丁度いい機会とばかりに巣材を全て取りのけて大掃除を行う事にしました。ケージの半分の床拭きプロセスが終わったので、今度はもう半分の方へ・・・とヘビに被せておいた業務用ペーパータオルをのけてみたらあらビックリ、なんと無茶苦茶怒っていた(写真上)。しかも噴気音抜きで即バンと来る方の怒り方で。このヘビはうちへ来て二年以上経つけれど、本当に何をされても怒るという事がなかったのでちょっと驚いた。人間と同じく、ふだんどんなに大人しいとされる個体にも、怒りのツボはあるんですね。気を付けたいと思います。

2014年12月3日水曜日

恋は浮力に乗せて


 ワニの交尾が水中で行われるというのは、本で読んだりして知識としてはあったけれど、今まで実際に自分の眼で見たことはなかったので、あまり実感としてどのようなものなのかはよく知らなかった。何の変哲もない今日と言う、寒くてどんより曇った典型的東海岸の水曜日はしかして「ワニの結婚」という、このぼんやりとしたコンセプトが急にはっきり現実性を帯びた日でもあった。動物園で朝、たまたまキューバワニ - Crocodylus rhombifer キューバン・クロコダイルの温室の前を通りかかると、オスのミゲルと、メスのローズが二匹揃ってぷかぷかしていたのだ。哺乳類特有の発想で「ワニでもじゃれて遊ぶことがあるんかな。」と通り過ぎようとし、「ンなわきゃない」と思い直して戻ってきて見たところ(厳密には、あるらしい。→2015年2月23日追記)、交尾中だった、というわけなのだ。ローズは終始何かが気に食わないらしく目を見開きキバをむいて、こんな動物にまたがろうと思えるのは同じワニのオスをおいて他にいないと思われた。キューバワニは小型だけれど非常に気性の荒いワニで、野生下では生息地の破壊と近縁種間での遺伝子汚染によって絶滅が懸念されているため、この二匹の残す子孫は、種の未来を担う大切な子供達ということになる。ミゲル君、お疲れ様。ローズさん、がんばって元気な卵を産めますように。